【獣医師監修】犬の予防接種の副作用(副反応)について解説
2023.04.14 作成

【獣医師監修】犬の予防接種の副作用(副反応)について解説

獣医師

藤野正義

藤野正義

犬が毎年必要な予防接種には、狂犬病ワクチンや混合ワクチンがあります。ワクチンは病気の予防として重要ですが、一方で副作用(副反応)を心配される飼い主さんも多いのではないでしょうか。今回は、ワクチンの副作用(副反応)にフォーカスし、動物病院を受診したほうがよい症状について解説します。

もくじ

    ワクチンはなぜ必要?

    【獣医師監修】犬の予防接種の副作用(副反応)について解説
    (PRESSLAB/shutterstock)

    感染症を予防する、もしくは感染しても重症化しないためには免疫が必要となります。一般的に、免疫を獲得するためには感染が必要になりますが、ワクチンを体内に注射することで、感染症にかかることなく、その病原体の免疫が作られます。

    この免疫の働きによって、つぎに病原体が侵入してきた際にも、病気の発症を防いだり、発症しても軽い症状で済ませたりすることができるのです。

    つまり、私たちがインフルエンザや新型コロナのワクチンを接種するのと同様に、愛犬にも予防接種を受けさせておくことで、病気の予防や重症化を防ぐことができるのです。

    犬の予防接種には義務と任意がある

    ワクチンには法律で接種することを義務付けられているワクチンと、任意で接種するワクチンがあります。

    日本で義務付けられている予防接種

    日本で、義務付けられているワクチンは狂犬病ワクチンです。狂犬病は狂犬病ウイルスを原因とする人獣共通感染症のひとつです。

    狂犬病ウイルスは、人を含む全ての哺乳類に感染します。一度発症してしまうと治療法は存在せず致死率はほぼ100%です。

    日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国々を除いて、全世界に分布します。つまり、海外ではほとんどの国で感染する可能性のある病気で、いまだに世界で毎年約6万人が狂犬病により死亡しています 。

    接種を推奨されているワクチン

    任意で接種するワクチンは、混合ワクチンです。混合ワクチンは、犬同士でうつる感染症のうち、ワクチンで予防できる複数の病気を、1本の注射でまとめて予防できます。

    混合ワクチンは、生後2ヶ月〜4ヶ月の間に3回接種し、その後は1年ごとに接種するのが一般的です。

    種類も5種〜10種と複数あり、どの時期にどの種類の混合ワクチンを接種するかは、生活環境などによって変わりますので、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。

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    予防接種の副作用(副反応)としてあらわれる症状

    予防接種の副作用(副反応)としてあらわれる症状
    (Stephanie L Sanchez/shutterstock)

    予防接種の副作用には、予防接種後すぐに重篤な症状が出るアナフィラキシーや、数日以内にあらわれるアレルギー症状などがあります。また、注射部位の痛み・注射部位にしこりができるなどの局所的なものもあります。

    ワクチンアレルギー

    ワクチンに含まれる牛由来成分に対してアレルギー反応が出る場合があります。

    ワクチンアレルギーは、狂犬病ワクチン、混合ワクチンのどちらでも起きる可能性があり、1回目の接種でアレルギーが起きる場合もあれば、複数回接種した時にアレルギーが起きることもあります。

    日本では他の犬種に比べ、ミニチュア・ダックスフンドで発生することが多いです。

    ワクチンアレルギーの症状

    症状としては、顔面の腫脹(ムーンフェイス)・むくみ・かゆみ・紅斑(こうはん)・蕁麻疹(じんましん)など皮膚に症状が出るパターンと、嘔吐・下痢など消化器症状があります。

    ワクチンアレルギーが起こるタイミング

    通常、ワクチンアレルギーの症状は予防接種後1〜4時間で起きることが多いですが、接種30分以内で起きることや、1日経ってから起きることもあります。

    アナフィラキシーショック

    ワクチンアレルギーの中でも特に気をつけなければいけないのが、アナフィラキシーです。

    アナフィラキシーとは、ワクチンのようなアレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性のアレルギー反応が起き、生命に危機を与える可能性のある過敏反応のことをいいます。

    その中でも、血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックと呼びます。

    アナフィラキシーショックの症状

    倒れる・ふらつく・舌色が悪い(チアノーゼ)・呼吸が荒く早いなど、循環器・呼吸器症状が主です。

    アナフィラキシー(ショック)が起こるタイミング

    アナフィラキシーはワクチン接種後5分以内で起きることが多く、遅くても60分以内に出現します。

    アナフィラキシーが起きた場合、8~72時間後に再びアナフィラキシー症状が発生することがあり、これをアナフィラキシーの二相性反応といいます。

    これに備えるため、アナフィラキシーが起きた場合は、3日間(72時間)の自宅モニタリングもしくは入院が必要となります。

    アレルギー以外の副作用

    ワクチンを接種した直後から、接種部位を足で掻いたり、触ると痛がったりした場合は、注射部位の痛みがあると予想されます。一般的には注射直後から症状が見られ、数時間で落ち着くことが多いです。

    ワクチンを接種した数日後にしこりができることもあります。通常一過性のもので1ヶ月を目安に縮小・消失することが多いですが、しこりが認められる場合は、念の為に診察を受けられることをおすすめします。

    すぐに動物病院を受診すべき症状とは?

    すぐに動物病院を受診すべき症状とは?
    (SeventyFour/shutterstock)

    ワクチン接種後、倒れる・ふらつく・嘔吐・呼吸が早い・急に元気がなくなる、などアナフィラキシーを疑う症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。

    アナフィラキシーが起きた場合、すぐに静脈点滴や血管収縮剤(アドレナリン)の投与が必要になります。

    顔が腫れる・皮膚が赤くなる・下痢などのアレルギー症状が出た場合も病院を受診したほうがよいでしょう。

    家から病院までの距離がある場合や、ワクチンアレルギーが心配であれば、ワクチン接種後10分、可能であれば30分は病院で待機することをおすすめします。

    ワクチンアレルギーが出た場合、次回のワクチンはどうするの?

    ワクチンアレルギーが出た場合、次回のワクチンはどうするの?
    (Billion Photos/shutterstock)

    例えば、狂犬病ワクチンは大丈夫だったのに、混合ワクチンでアレルギーが出た場合、狂犬病ワクチンは次回も接種して問題ありません。その反対もしかりです。

    一度アレルギーが出たものと同じワクチンを接種する際は、獣医師の判断に従いましょう。

    • 違うメーカーのワクチンを接種する
    • アレルギーを抑える処置(抗ヒスタミンの注射をワクチン接種前に注射する など)をしてから、ワクチン接種する

    といった対応方法があります。

    また、血液検査で抗体価を測定し免疫力の評価をすることにより、十分な抗体価があればワクチン接種を延期することもできます。

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    まとめ

    まとめ
    (FamVeld/shutterstock)

    病気の予防に必要なワクチン接種ですが、犬種・年齢・接種回数に関係せずアレルギーなどの副作用(副反応)が起きる可能性があります。

    予防接種は体調がよいときに行い、接種1日前から接種3日後まではトリミングや激しい運動などは控えましょう。

    特に、予防接種してから1時間は体調に問題が起きないか観察してください。

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    著者・監修者

    藤野正義

    獣医師

    藤野正義

    プロフィール詳細

    所属 アステール動物病院

    日本獣医皮膚科学会

    略歴 1986年 石川県金沢市に生まれる
    2006年 酪農学園大学獣医学部獣医学科に入学
    2012年 獣医師国家資格取得
    2012年~2018年 神奈川県内動物病院に勤務
    2018年~2019年 埼玉県内動物病院に勤務
    2019年〜 アステール動物病院に勤務

    資格 獣医師免許
    日本獣医皮膚科学会 認定医

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