【獣医師監修】子犬が吐くのはなぜ?考えられる理由と病院受診のポイント
2023.11.15 作成

【獣医師監修】子犬が吐くのはなぜ?考えられる理由と病院受診のポイント

獣医師/ペット栄養管理士

森井知里

森井知里

子犬が突然吐くと、驚く飼い主さんは多いかと思います。犬はどのような原因で吐くのでしょうか。いざというときに慌てないよう、子犬が吐いたときに考えられる原因、嘔吐の症状がある病気、対処法を知っておきましょう。

もくじ

    子犬は吐きやすい?

    【獣医師監修】子犬が吐くのはなぜ?考えられる理由と病院受診のポイント
    (cunaplus/shutterstock)

    子犬は消化機能がまだまだ未熟なため、消化吸収がうまくできず健康でも吐くことがあります。しかし、何度も吐く場合は注意が必要です。

    病気の症状のひとつとして吐くことも多いため、飼い主さんは嘔吐物をよく観察したり、写真や動画に残したり、嘔吐した時間や回数など状況を記録しておくとよいでしょう。

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    子犬が吐いたときに気をつけておきたいポイント

    子犬が吐いたときに気をつけておきたいポイント
    (John Albert Photography/shutterstock)

    吐いた時のお腹の動きを確認する

    一口に吐くといっても、「嘔吐(おうと)」と「吐出(としゅつ)」があります。

    飼い主さん自身が見分けるのは難しいかもしれませんが、余裕があれば愛犬の吐いた時のお腹の動きや吐き出される様子を観察してみましょう。

    「嘔吐」はお腹に力が入り、オエッ、オエッとお腹を凹ませ絞るような行動をともないます。胃が収縮した後に口から食べ物や液体をゲボッと吐き出します。

    「吐出」は食べ物や液体を飲み込んだ後、胃に到達する前に逆流し口から出てくる現象で、嘔吐のようにお腹を絞るような行動は見られません。突然ゲーッと吐き出されます。

    嘔吐と吐出の違いによって、考えられる病気や病院を受診した際に行われる検査が異なります。 

    吐き出したものの色・内容物を確認する

    吐き出したものがどんなものだったかは、診断に役立ちます。様子を見ていてよいものか、血が混ざっているなど緊急性の高いものかどうかを確認するためにも、吐いたものを確認しましょう。

    子犬が吐きだすものの代表的な例については、「該当見出しリンク」で詳しく解説します。

    嘔吐の頻度・タイミングを記録する

    1日の嘔吐回数、食事との間隔を記録しましょう。記録することで、症状の様子が把握しやすくなります。1日に何度も吐いている、何日も続いて吐いている場合には病院を受診しましょう。

    また、記録内容は病院を受診した際にも診断に役立ちます。

    吐いた後の様子を確認する

    元気や食欲があるかどうか、確認しましょう。

    その他の症状の有無を確認する

    下痢、食欲不振、悪心、流涎、発熱など、ほかにも症状がないか確認しましょう。症状がある場合は、様子を見ずに動物病院へ連れていきましょう。

    犬はどんなものを吐く?代表的な嘔吐物とその特徴

    犬はどんなものを吐く?代表的な嘔吐物とその特徴
    (KatrinaToompere/shutterstock)

    犬が吐き出すものの中で、代表的なものや特徴は以下の通りです。

    毛玉

    換毛期など毛の抜けやすい時期には、抜けた毛を飲み込んでしまうことがあります。毛は消化されないため、便と一緒に排泄されるか吐き出すかで体外に出されます。

    消化されていないフード

    ドロドロしていたり、フードの塊が混ざっていたり、フードのにおいがしていれば、食べたフードがうまく消化されなかった可能性があります。

    食欲があって元気な様子が見られる、吐く回数が増えていないようであれば、様子をみてよいでしょう。

    犬は草を食べるとその刺激で嘔吐を起こしたり、植物の種類によっては中毒を起こしたりして吐くことがあります。

    犬はおなかの調子がよくないときに草を食べるという説がありますが、理由ははっきり分かっていません。あまり積極的に食べさせないよう注意しましょう。

    黄色い液体

    吐き出された黄色い液体は「胆汁(たんじゅう)」です。長時間にわたって胃が空の状態が続くと、胆汁が胃に逆流し「胆汁嘔吐症候群」を引き起こすことがあります。

    透明の液体・泡

    透明な液体や泡の正体は、水か胃液、唾液の可能性が高いです。勢いよくたくさんの水を飲むことが原因となることが多いため、一気飲みしないよう様子を見ながら少しずつ与えましょう。

    胃液を吐くのは、胆汁(黄色い液体)を吐いたときと同じく、空腹で胃酸が多く分泌されることが原因です。

    茶色い液体

    フードが消化されて液状になっているにもかかわらず、嘔吐物が茶色い場合は、血液が混ざっている可能性もあります。胃や腸の病気が原因で出血し、血液が酸化することで茶色くなります。

    食欲や元気がなく、その後も吐く回数が増えるようであれば、動物病院を受診しましょう。

    ピンク~赤色の液体

    赤い色の液体は血である可能性があります。肺や気管支などの呼吸器から出血しているとき、重度の胃潰瘍(いかいよう)や食道の病気があるときなどに血を吐くことがあります。

    また、口の中のケガによって嘔吐物に血が混ざり、ピンク~赤色の液体を吐くこともあります。

    異物(誤飲)

    子犬は好奇心が強いため、おもちゃの破片や果物の種、骨、串、ひも、ボタン、ビニール、人の薬、タバコなどを間違って飲み込むことがあります。嘔吐物に普段食べていないものが混入していたら、誤飲の可能性が考えられます。

    誤飲の場合、中毒症状が現れたり、胃内異物が刺激となって体内から排出されるまで何度も嘔吐を繰り返したり、何も出ないのに吐くしぐさをしたりすることがあります。

    異物が胃から腸へと移動して腸に詰まると腸閉塞(ちょうへいそく)を引き起こし、放っておくと命に関わる危険性があるため、すぐに動物病院に連れて行きかかりつけの先生に相談しましょう。

    中毒を引き起こしている場合、食べたものによって対処方法や治療法が異なるため、誤飲したものの種類、成分、量、時間などを記録しておきましょう。

    病院に連れていくか判断するポイント

    病院に連れていくか判断するポイント
    (SeventyFour/shutterstock)

    次の症状・様子が見られた場合は、様子を見ずに動物病院へ連れていきましょう。

    • 1日に何度も吐いている
    • 何日も続いて吐いている
    • 元気や食欲がない
    • 吐こうとするが吐けない
    • 食べ物以外のものを食べた
    • 吐いたものに異物が混ざっている
    • 吐く以外に下痢や熱っぽさがある
    • 呼吸がおかしい、苦しそう

    なお、子犬の場合は容体が急変しやすいため、フードの変更や食べ過ぎによる消化不良など、原因が明確な場合以外は基本的には受診をお勧めします。

    子犬が吐く原因・考えられる病気

    子犬が吐く原因・考えられる病気
    (In Green/shutterstock)

    子犬が吐く原因は次のものが考えられます。

    【環境や生活スタイルによるもの】

    • 食べ方や食事内容(空腹、早食い、食べすぎ、急な食事内容の変更など)
    • 環境の変化によるストレス

    【病気によるもの】

    • 消化器系疾患(炎症、閉塞、胃腸、膵臓、肝臓の炎症、胃腸炎、逆流性胃炎、胆汁嘔吐症候群、膵疾患、肝疾患など)
    • 腎疾患
    • 食物アレルギーや中毒
    • 熱中症
    • 感染症(細菌性腸炎:大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなど、ウイルス性腸炎や肝炎:パルボウイルス、ジステンパーウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス1型など、寄生虫感染:回虫など)
    • 誤飲、誤食

    ワクチンで防げる感染症

    抵抗力の弱い子犬がかかると、症状が重くなる感染症があります。次の感染症は、混合ワクチンで予防が可能になります。獣医師の指示どおりにワクチンを受けましょう。

    • 激しい嘔吐や下痢が主症状で伝染性が高く、死亡率の高い犬パルボウイルス感染症
    • 嘔吐や下痢を起こし、発熱、神経症状なども見られる犬ジステンパー
    • 腸炎(下痢や嘔吐)を引き起こし、子犬ではほかのウイルス感染症との複合感染で重症になる恐れがある犬コロナウイルス感染症
    • 肝炎を主とし、嘔吐や下痢、食欲不振などが起こり、突然死のリスクがある犬伝染性肝炎

    誤飲・誤食、中毒

    食べ物ではないものを飲み込んでしまった場合、嘔吐が現れることが多く見受けられます。また、中毒症状を起こす食べ物や、食べ物以外のものを食べてしまって嘔吐することも多いので気をつけましょう。

    【中毒を起こす恐れがある食べ物】
    ブドウ、キシリトール、チョコレート、タマネギ、ネギなど

    【中毒を起こす恐れがある植物】
    シクラメン、ポインセチア、アイビー、カラーなど

    子犬が吐いた時の対処法

    子犬が吐いた時の対処法
    (IhorL/shutterstock)

    吐いた直後は一時的に食事や飲水を控える

    胃や腸にトラブルが生じているときに胃の中にものが入ってくると、再度、胃腸運動が起きて状態が悪化する可能性があります。

    軽症の場合、徐々にいつも通りに

    元気で食欲があり、症状も軽く、様子をみているうちに治まるようであれば、少し時間が経ってから、水やフードを少量から与えてみましょう。食べても吐かなければ、徐々にいつも通りの量に戻して与えてください。

    元気がなく、嘔吐を繰り返すようであれば病院へ

    犬が吐く原因が何らの病気である場合は、食べたり飲んだりする度に吐いてしまう可能性があります。嘔吐が続くと体力を消耗して弱ってしまうため、早めに動物病院を受診して対処してもらいましょう。

    早食いや水の一気飲みをさせない

    食器や給水器を工夫しましょう。早食いをする場合は、1食分を一度に器に入れず、食べるスピードに合わせて少量ずつ足しながら与えるとよいでしょう。

    空腹の時間を短くする

    胃が空の状態が長時間続くのを防ぎましょう。

    • 明け方に黄色の液体を吐く場合は、寝る前に少量のフードやおやつを与える
    • 透明の液体や泡を吐く場合には、食事の回数を調整する

    といった対応をし、それでも吐く頻度や量が増えるならば、かかりつけの先生に相談しましょう。

    定期的なブラッシングをする

    毛を吐くときには、被毛の飲み込みを防ぐことが重要です。ブラッシングをして抜け毛を除去し、毛玉の飲み込みを予防しましょう。換毛期にはこまめに掃除機をかけ、室内に被毛が落ちていない状態を保つことを心がけてください。

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    まとめ

    消化器が未発達な子犬は、成犬よりも嘔吐しやすくなります。子犬が吐くときに考えられる原因、嘔吐の症状がある病気、対処法を知り、いざというときに備えましょう。

    吐いたあと元気がない、吐き気が続いているなど、ほかに症状がみられるようであれば、病気の可能性もあります。早急に動物病院へ連れていきましょう。

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    著者・監修者

    森井知里

    獣医師/ペット栄養管理士

    森井知里

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)

    日本ペット栄養学会

    略歴 1992年 三重県に生まれる
    2011年 麻布大学獣医学部動物応用科学科に入学
    2013年 麻布大学獣医学部獣医学科に転学科
    在学中、料理教室で講師を務める
    2018年 獣医師国家資格取得
    2018年 東京都内動物病院に勤務
    2019年~2021年 千葉県内動物病院に勤務
    2022年~2023年 東京大学附属動物医療センターで内科系研修医として勤務
    2023年4月~ yourmother合同会社に勤務

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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