皆さまはペットの歯みがきをしていますか?
大切とは聞くけれどなかなかやらせてくれないという悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
そもそも歯みがきはなぜ大切なのか、歯みがきのやり方やコツは何かご紹介いたします。
歯みがきはなぜ大切か
犬猫は虫歯になりにくいと聞いたことはありませんか?実際、虫歯の犬猫を診察することはほとんどありません。虫歯にならないなら歯みがきの必要はないのではと思ってしまいますが、そうではありません。
犬猫の歯の病気で一番多いのは歯周病
食べかすなどの汚れを歯みがきせずに放置しておくと、歯の表面に歯垢がたまります。歯垢の中には多くの細菌が潜んでおり、細菌から発生する酸で歯が溶けていく病気を虫歯、細菌によって歯肉など歯周組織に炎症が起こる病気を歯周病といいます。
歯垢を放置すると徐々に固くなり歯石になります。歯石の中に細菌はいませんが、歯石が付着すると歯の表面が凸凹になるため、より歯垢がたまりやすくなるという悪循環が生まれます。
犬猫が虫歯ではなく歯周病になりやすい理由のひとつに口腔内の酸性度(pH)があげられます。一般に虫歯は酸性の環境のもとで進行します。犬猫の口腔内のpHは、人よりもアルカリ性に傾いており、虫歯になりにくいと考えられています。
犬 | 8.5〜9.5(アルカリ性) |
猫 | 8.0〜8.5(アルカリ性) |
人 | 6.5〜7.0(弱酸性~中性) |
一方で、歯垢が歯石に変わるスピードも口腔内のpHが関与しているといわれており、犬猫は、このスピードが早いため歯周病になりやすいのです。
※人:25日位、犬:3〜5日、猫:約1週間
歯垢は歯みがきで落とせますが、歯石は歯みがきではとれません。歯周病を予防するには、歯垢が歯石になる前に歯みがきで汚れを落とし続けることが大切です。つまり、3日に一度程度は歯みがきを行えるとよいでしょう。
猫の場合、ウイルス性疾患が関与して慢性的な歯周病を起こすことも知られていますが、基本的には犬と同じ考え方で、歯みがきは必要です。
3歳以上の犬猫の約80%は歯周病になっているともいわれており、高齢になるほどその発症率は高くなります。
歯周病になるとどうなるの?
歯周病でみられる症状には、次のようなものがあります。
歯肉が赤い |
口臭がある |
よだれが多い |
口の周りをさわられることをいやがる |
痛みでものが食べられない(食欲はありそう) |
歯がぐらぐらする |
歯周病は、歯肉炎→歯周炎と進行していきます。このような症状が複数みられる場合は、歯周病が進行している恐れもあり、特に注意が必要です。
歯周病が進行するとその他の病気を併発することも
歯周病がさらに進行し、歯の根元に膿がたまると、顔が腫れ皮膚に穴があいたり、
鼻とつながることで鼻水や鼻血がでたりすることがあります。また、下顎骨骨折
が起こる場合があります。
炎症部位の細菌が血流を通して影響を及ぼし、心臓病等の発症にも関連している可能性も考えられています。
歯周病になってしまったら
歯周病の治療では、まず歯石を除去します。重度な場合は抜歯も行います。同時に、ご家庭で歯みがき等のケアを続けることで、炎症がおさまっていきます。
歯みがきをしてみよう!
歯周病予防には、歯ブラシを使っての歯みがきが最も効果的です。
歯と歯肉の間の汚れを落とせるように意識します。
いきなり歯ブラシを持っていき歯みがきをしようとしても歯ブラシをかんでしまったり、逃げてしまったり…。
実際に行うには、少し根気のいるステップが必要ですが、焦らず楽しみながら取り組みましょう。無理に行うと、お互いのケガにつながってしまう可能性もありますので、強要はせず歯みがきは楽しいと思ってもらえるよう心がけましょう。
歯みがきができるまでのステップ
1.口の周りにさわる
口の周りをさわってみましょう。後退りしてしまう場合は、うしろから抱っこする姿勢でさわってみましょう。
2.口の中や歯をさわる
徐々に口の中や歯にもふれてみましょう。初めは無理せず少しでもさわれたら必ずほめましょう。できたらおやつを与えるなど、歯みがきをすると楽しいことが起こると習慣化することもよいでしょう。
3.ガーゼでこする
指に水で濡らしたガーゼを巻き付けてこすってみましょう。はじめは好きなフードの汁などでもかまいません。まずは前歯から行います。慣れてきたら奥歯も行いましょう。ガーゼを食べられてしまわないように気を付けましょう。
4.歯ブラシを使う
最初は歯ブラシのにおいをかがせたり、フードの汁をつけるなどいいにおいをさせて歯ブラシを近づけたりして歯ブラシに慣らせましょう。毛は柔らかいものを使います。
口に入れられるようになったら、まずは前歯の外側からみがきます。慣れたら奥歯、歯の裏側と進めていきます。歯みがきペーストを使用する場合は動物用のものを使いましょう。
猫の場合、ものを噛む習性が犬と違いあまりないので犬よりも口の中をさわられることを嫌がることが多く、さらに根気がいる場合が多いです。焦らずゆっくりとステップアップを目指しましょう。
できる限り社会的形成期である子犬子猫の乳歯の時から歯みがきをすることで習慣化しやすいでしょう。遊びやふれあいの時間に少しでよいので歯にふれる時間を作りましょう。
歯みがき以外にできること
歯ブラシによる歯みがきが理想ですが、歯みがきに慣れるまでの間やどうしても嫌がってしまう日などに歯みがき以外にできることとして、デンタルシートやガーゼを使ってこすったり、口腔スプレーを用いて口の中に液体を塗布したり方法があります。
また、デンタルガムやロープ状の玩具などを噛むことでも歯垢や歯石の付着を軽減させる効果があることがわかっています。歯の色々な位置で噛んでくれなかったり、ガムの場合すぐに飲み込んでしまったりする子は効果が下がってしまいますので、歯みがきとの併用がおすすめです。
食べ物についても缶詰タイプの柔らかいフードよりもドライタイプの方が歯垢・歯石の付着率は低くなります。
寿命が伸びたことにより、歯の健康を維持することはとても大切です。
楽しみながら歯みがきを継続し、健康な歯を守りましょう。
ペット&ファミリー損保所属獣医師