
愛猫の背中に白い粉のようなものを見つけ、「これってフケ?」「放置しても大丈夫?」などと疑問をもつ飼い主さんは少なくないでしょう。少量であれば生理的な現象ですが、量が多かったり、かゆがったり、ベタつきが強かったりする場合は病気のサインかも知れません。受診すべき猫のフケの見分け方、日常でできるケアについて解説します。
もくじ

猫の皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という3つの層で構成されています。表皮の基底部では常に新しい細胞が作られ、約21日間かけて角質となり剥がれ落ちていきます(ターンオーバー)。
角質の層は外部からの異物侵入を防ぎ、体内の水分蒸散を防ぐバリア機能を担っています。この役割を終えた古い角質細胞が、目に見えないほどの微小なサイズで剥がれ落ちていくのが正常な皮膚の代謝です。
しかし、何らかの原因で皮膚のターンオーバーが異常に早まったり、角質層の接着が乱れたりすると、未熟な細胞が大きな塊として剥がれ落ちるようになります。これが肉眼で確認できる「フケ」の正体です。
つまり、フケが目立つ状態というのは、皮膚のバリア機能が正常に働いていないサインといえます。

皮膚疾患などの明確な病気ではなくても、日常の環境要因や生活習慣がフケを引き起こす主な原因となります。
冬場の極度な乾燥や、冷房(エアコン)使用による除湿は、猫の皮膚に深刻な水分不足を引き起こします。
皮膚の角質層にはセラミドなどの細胞間脂質が存在し、水分を抱え込む役割を担っています。しかし、湿度が低下すると経表皮水分蒸散量(TEWL)が増加し、角質層がカラカラに乾いてひび割れた状態になります。
これがパラパラとした乾いた白いフケを発生させる大きな原因です。
猫は多くの時間を毛づくろい(グルーミング)に費やします。ザラザラとした舌の突起を使って被毛を舐めることで、抜け毛や古くなった角質、余分な皮脂を取り除いて体を清潔に保っています。
しかし、高齢になって関節炎を発症したり、肥満で体が曲がらなかったり、重度の口内炎で痛みがあったりすると、背中や腰回りなど特定の部位に口が届かなくなります。
結果として本来は剥がれ落ちるはずのフケがうまく剥がれ落ちず、大きな塊になって剥がれ落ちることでフケにつながります。
動物病院での診察、引っ越し、新しいペットの迎え入れなど、急激なストレスを感じた際に、一時的に大量のフケが出ることがあります。
これは交感神経が優位になり、立毛筋(被毛の根元にある筋肉)が強く収縮することで、毛穴の奥や被毛の根元に溜まっていたフケが一気に皮膚表面へと押し出されるためです。
診察台の上などで突然白い粉が吹き出したように見えるのは、この生理的な反応によるものです。
皮膚や被毛はタンパク質から作られており、皮膚のバリア機能を正常に保つためには良質な脂質が不可欠です。
特に、体内では合成できないリノール酸などのオメガ6脂肪酸や、EPA・DHAなどのオメガ3脂肪酸といった必須脂肪酸が不足すると、皮脂の分泌バランスが崩れ、角質層が脆くなります。
安価で栄養素が偏ったフードや、極端な食事制限は、皮膚の栄養失調を招きフケの原因となります。
健康な猫でも新陳代謝によって古い角質が剥がれ落ちるため、少量のフケは生理的脱落として必ず発生します。
換毛期のブラッシング時などに被毛の奥にわずかに確認できる程度で、皮膚に赤みやかゆみをともなっていなければ、過度に心配する必要はありません。

単なる乾燥や生理現象ではなく、病気によるフケも存在します。
マイクロスポラム・カニスなどの真菌(カビ)が、被毛や角質層に感染して増殖する病気で、免疫力の未熟な子猫に多く見られます。
円形に毛が抜ける(リングワーム)のが特徴で、その周囲に多量のカサカサとしたフケをともないます。人にもうつる「人獣共通感染症(ズーノーシス)」であるため、飼い主さんも注意が必要です。
飼い主さんの皮膚に赤いリング状の発疹と強いかゆみが見られたら、早期の抗真菌薬による治療と徹底した環境消毒が必要になります。
ツメダニ(Cheyletiella)という非常に小さなダニが、皮膚表面に寄生することで発症します。猫のフケを餌にして動き回るため、フケの塊自体がモゾモゾと動いているように見えることから、別名「歩くフケ(Walking dandruff)」とも呼ばれます 。
接触によってほかの猫へと感染が拡大するため、多頭飼育環境では全頭同時の駆虫処置が必須となります。
皮脂腺からの皮脂の分泌が過剰、あるいは異常になることで皮膚のターンオーバーが乱れる病態です。
皮膚がベタベタになり黄色っぽいフケが出る「油性脂漏症」と、乾燥して細かいフケが出る「乾性脂漏症」があります。
猫特有の症状として、「スタッドテイル(尾腺炎)」が挙げられます。しっぽの付け根(尾背面)には皮脂腺が発達した尾腺があり、ここからの分泌過剰により毛穴が詰まり、黒いワックス状の汚れや多量のフケ、脱毛を引き起こします。
未去勢のオス猫に多く見られる傾向があります。
食物アレルギーや、環境中のアレルゲン(ハウスダスト、花粉など)に対するアトピー性皮膚炎、ノミアレルギーなどが原因で、皮膚に強い炎症が起こる病気です。
食事や環境によるアレルギーは激しいかゆみをともないます。猫自身が過剰に舐めたり掻きむしったりすることで皮膚のバリア機能が物理的に破壊され、二次的な細菌感染を併発して多量のフケやかさぶたが発生します。

愛猫にフケが見られた際、自宅でケアして様子を見るべきか、動物病院を受診すべきか判断するための指標(サイン)を解説します。
以下に該当する場合は病気の可能性が高いため、早期の受診を推奨します。
ブラッシング時に少し出る程度ではなく、猫が身震いをしただけで床に落ちるほど大量に発生している場合や、寝床が白い粉で覆われるような状態は、明らかにターンオーバーが異常をきたしています。
フケに加えて、頻繁に後ろ足で首や耳の裏をかいている、同じ部位(お腹や内股など)を過剰に舐め続けている場合は注意が必要です。強いかゆみはアレルギーや外部寄生虫感染の典型的なサインです。
被毛をかき分けて地肌を観察したとき、皮膚が赤く炎症を起こしている、局所的または広範囲なハゲ(脱毛)がある、皮膚の表面に黒や黄色のブツブツとしたかさぶた(痂皮)が混じっている場合は、すでに皮膚炎が進行しています。
乾燥した白い粉状のフケではなく、ロウや耳垢のように黄色っぽくベタベタしている場合や、皮膚からツンとした悪臭(脂漏臭)が漂っている場合は、脂漏症やマラセチア(酵母菌)の過増殖が疑われます。
耳の縁(辺縁部)や顔回り、しっぽの付け根など、特定の部分に集中して固まったようなフケが出ている場合は、真菌症やスタッドテイルなど動物の特定の場所に起きる生理的な病変の可能性が高くなります。

フケの原因が乾燥や加齢にともなうグルーミング不足だと獣医師に判断された場合、飼い主さんの日々のスキンケアが、最も効果的な対策となります。
現在出ているフケの取り方と猫のフケを減らしていくための方法をご紹介します。
ブラッシングの最大の目的は、皮膚の表面に留まっている古くなった角質と死毛(抜け毛)を除去し、皮膚の通気性を確保してターンオーバーを正常化させることです。
短毛種と長毛種で、被毛の性質に合わせたブラシ選びが重要になります。
皮膚を傷つけないシリコン製のラバーブラシや、表面の汚れを落として艶を出す獣毛ブラシが適しています。
スリッカーブラシを使って優しく毛玉やもつれを解いた後、金属製のコームを使って根本からしっかりと梳かして通気性を保ちます。
ただし、フケを取りたいからとスリッカーブラシのピンを猫の地肌に強く押し当てるのは厳禁です。擦過傷(ブラシ負け)を引き起こし、バリア機能を破壊してさらなるフケの原因を作ります。
フケ対策において皮膚の保湿は極めて重要視されています。乾燥性のフケに対しては、角質層の水分保持能力を高めるセラミドなどが配合された猫用保湿スプレーや、被毛に馴染みやすい泡(フォーム)タイプの保湿剤が有効です。
乾燥が目立ちやすい背中や腰周りの被毛をかき分け、地肌に直接塗布して優しく揉み込むことで、失われた皮膚の水分と脂質を補給します。
猫の皮膚にとって乾燥は天敵です。特に冬場はエアコンの暖房によって湿度が急激に低下するため、加湿器を積極的に稼働させてください。理想的な湿度の目安は50~60%です。
また、エアコンの温風や冷風が直接猫の寝床に当たらないよう、風向きを調整することも重要です。
皮膚の細胞は日々新しく作り替えられているため、内側からのケアも欠かせません。
皮膚の健康をサポートする成分が調整された療法食への変更や、細胞膜の構成成分となる必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6脂肪酸)を豊富に含むサプリメントを食事に添加することで、皮膚バリアの修復と抗炎症作用を促せます 。

猫は自身で入念なグルーミングを行うため、基本的に頻繁なシャンプーは不要です。
しかし、ベタつきの強い脂漏症やスタッドテイル、あるいは重度のカビの感染症などの治療では、薬浴(シャンプー療法)が非常に有効な治療手段となります。
脂漏症の場合は、獣医師の指示のもとでサリチル酸や硫黄など角質調整作用のある専用シャンプーを選択します。
一方で、乾燥からくるフケに対して洗浄力の強すぎるシャンプーを使用すると、皮膚を守っている必要な皮脂まで根こそぎ洗い流してしまい、乾燥とフケをさらに悪化させます。
フケ対策としてシャンプーを選ぶ場合は、皮膚のpHに近い低刺激な成分で、セラミドやオートミールエキスなどの保湿成分が重視されたものを選ぶのがポイントです。
獣医師に相談の上、適切なシャンプーを選択しましょう。
猫にシャンプーをする際、水や拘束を極端に嫌がる猫に無理強いすることは避けてください。強いストレスは免疫力を低下させ、交感神経の興奮からフケを悪化させるばかりか、パニックによる思わぬ事故に繋がります。
自宅でのシャンプーが困難な場合は、洗い流しが不要なドライシャンプーや、清拭用のボディシートを活用し、無理のない範囲でケアを行うことが大切です。
猫のフケは、乾燥などの環境要因から、人にも感染する皮膚糸状菌症のような厄介な病気まで、多岐にわたる原因で発生します。フケの量、かゆみの有無、皮膚の赤みなどを観察し、異常なサインが見られる場合は動物病院を受診しましょう。
病気でないことがわかったら、正しいブラッシングによる物理的な清浄化、専用剤を用いた保湿、適切な湿度管理、栄養バランスの見直しなどのスキンケアを日常的に継続し、愛猫の健やかな皮膚を守りましょう。
【関連記事】
【獣医師監修】猫にシャンプーは必要ない?適切な頻度や人間用は使ってもいいの?疑問を徹底解説
猫にシャワーをかけても大丈夫?上手なシャンプーの仕方
猫をお風呂に入れたい!覚えておきたい猫の正しい入浴方法
子猫をお風呂に入れてもいいの?必要な準備や上手な入れ方を解説