
犬の精巣(金玉)はオス特有の臓器です。外観上は肛門の直下に位置し、成長とともに睾丸(こうがん)が陰嚢(いんのう)に降りてくるのが一般的です。今回は、精巣の役割や、精巣にまつわる病気、去勢手術によるメリット、デメリットなどを解説します。
もくじ

犬の精巣(金玉)の主な役割は、精子の産生とホルモン(主にテストステロン)の分泌です。テストステロンは一般的に男性ホルモンと呼ばれ、精子の形成の促進や性成熟の維持などを行います。
去勢をしていない成犬の立ち姿を後ろから見たとき、股の内側、肛門の下あたりに見える左右対称の卵型の器官が精巣(金玉)です。
毛量が多い犬種では分かりづらいこともありますが、どの犬種も円形~卵円形をしています。
生まれる前から生後すぐの精巣は腹腔内(お腹の中)にあり、外からは精巣が見当たらず触って確認することもできません。
生後1~3か月頃に陰嚢内(いんのうない)に降りてくるのが一般的ですが、可動性が高く触ると腹腔内に引っ込むこともあります(しばらくすると戻ります)。
大きさには個体差がありますが、左右の大きさに差がないのが正常です。
去勢手術では、左右の陰嚢を切開して精巣を取り出します。
陰嚢は精巣を包む袋のようなもので、去勢手術後すぐは小さくしぼんだ風船のような形になり、徐々に小さくなっていきます。数年経過すると陰嚢自体がほぼ分からなくなることもあります。
去勢手術のメリットについては、後述の「犬の去勢手術のメリット」で解説します。

生後半年を過ぎても精巣が片方、もしくは両方ない場合、潜在精巣(停留睾丸)の可能性があります。
精巣が確認できない状態で子犬を迎え入れた場合は、混合ワクチンや狂犬病ワクチンなどの受診のタイミングで、獣医師に精巣が触知できるか確認してもらいましょう。
長い目でみると、精巣が降りてこないことが病気につながる可能性があります。潜在精巣(停留睾丸)にまつわる病気については、「精巣に起こる病気とは?」をご参照ください。

病気で精巣がいつもよりも大きく腫れ上がっている可能性もあります。病気によって腫れ方はさまざまですが、片方だけが腫れていたり両方腫れていたりするほかに、熱を持っていることもあります。

左右もしくは両方の精巣が陰嚢内に降りてこない状態のことを潜在精巣(せんざいせいそう)といいます。
精巣は生後1~3か月頃に腹腔内(お腹の中)から陰嚢に降りるのが通常ですが、腹腔内や、腹腔から陰嚢の途中(鼠経管や外鼠経輪の皮下)に留まる場合もあります。
両方の精巣が降りてこないことは少なく、片方の精巣のみ降りてこないことが多いです。
潜在精巣だからといってすぐに病気になる可能性はほぼありませんが、正常な精巣と比較して老齢になったときに腫瘍化する確率が高いため、若齢時の去勢手術が推奨されます。
高齢の犬では、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)が多く見受けられます。精巣腫瘍が起こる大きな要因は年齢と潜在精巣です。
精巣腫瘍にはセルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫(間質細胞腫)、精上皮細胞腫があり、精巣の腫大が共通して見られます。
セルトリ細胞腫、間質細胞腫では、エストロジェンというホルモン分泌によって腫瘍がある精巣とは反対側の精巣が委縮したり、乳房が大きくなったりと、さまざまな異常がみられることがあります。
精巣炎は、尿道から細菌が侵入したり、血液に細菌が入ったりすることで精巣が感染、炎症を起こします。
感染してすぐの急性期では、精巣が大きく腫れ、熱を持ち痛みもともなうことから、犬がしきりに精巣を舐めたがったり、飼い主さんが触るのを嫌がったりします。
飼い主さんが変化に気づかず慢性化すると、腫れがひいて外観上は分からないことがあるため注意が必要です。
精索捻転(精巣捻転/せいそうねんてん)は、腹腔内にとどまった精巣に起きやすいです。
腹腔内の精巣がねじれると、激しい腹痛が起きます。陰嚢内の精巣が捻転した場合も激しい痛み、精巣の腫れが起きます。
精巣捻転が起きると精巣への血流が止まり、1~2時間後には精巣の機能が回復しない状態になります。精巣捻転が確認されたときは、治療のための去勢手術が必要です。

精巣にまつわる病気はたくさんあり、精巣そのものだけでなく、精巣から出るホルモンが影響する病気もあります。去勢手術をすることで先ほど紹介した病気を予防できるのが、大きなメリットといえるでしょう。
精巣の細胞が産生しているテストステロンは行動にも影響するといわれ、攻撃性が高い犬の場合、去勢が推奨されることもあります。
精巣を取ることで発情期がなくなるため、発情期にともなうストレスをなくすことができたり、早めの去勢でマーキングを抑えたりすることもできます。
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精巣は繁殖を行う上で非常に重要な臓器です。しかし、高齢になるにつれて病気になるリスクもともないます。去勢しない場合は、精巣そのものや犬の行動に変化がないかをこまめにチェックしましょう。
異常が見受けられた場合は、動物病院を受診してください。
繁殖をしない場合は早めの去勢で病気のリスクを減らすのも方法です。一緒に暮らすうえでお互いにメリットになる方法を見つけましょう。