【獣医師監修】愛犬に元気がないのは体調不良のサイン?動物病院受診の目安
2023.05.18 作成

【獣医師監修】愛犬に元気がないのは体調不良のサイン?動物病院受診の目安

獣医師

久保薗昌彦

久保薗昌彦

「急に愛犬に下痢や嘔吐が始まり食欲がない」「呼吸が苦しそう」「けいれん発作を起こした」などの場合、迷わず動物病院に行く飼い主さんは多いでしょう。しかし、「いつも元気いっぱいの愛犬がなんだかおとなしい」「なんとなく様子がおかしいかも?」といった場合には、動物病院の受診をためらうことも多いかと思います。ちょっとした変化が病気のサインである可能性もあるため、注意が必要です。

もくじ

    愛犬の体調不良…犬の元気がなくなる病気は多い

    【獣医師監修】愛犬に元気がないのは体調不良のサイン?動物病院受診の目安
    (KPG-Payless /shutterstock)

    病気の中には特徴的な症状として嘔吐や下痢などの消化器症状が出るもの、咳やくしゃみなどの呼吸器症状が出るもの、けいれん発作や起立・歩行困難などの神経症状が出るものなど、どこの病気かがわかりやすいものもあります。

    しかし、いきなり症状が出ず、大きな病気であっても最初は元気がなくなるだけの病気も多いため注意しましょう。

    元気がなくなる代表的な病気の例

    貧血

    貧血は重度になると口腔内の粘膜が白くなったり、原因によっては血の色をしたおしっこをするなどの症状が現れることもあります。しかし初期症状は元気がなくなったり、散歩で疲れやすくなるだけで、その他には飼い主さんの目から見て明らかな症状は現れません。

    貧血というと軽い病気のように感じますが、その原因は自分の免疫が赤血球を攻撃して壊してしまう自己免疫疾患やお腹の中にできた腫瘍から出血する腹腔内出血といった怖くて緊急性の高い病気であることも多いです。

    椎間板ヘルニア

    首や腰の椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患の場合も症状が軽度な場合はあまり動きたがらない以外の症状がない場合もあります。しかし症状が軽度に見えても軽い病状であるとは限りません。検査をしてみると脊髄神経の圧迫は中等度から重度であることも十分に考えられるからです。

    そのような場合には内科管理が困難であることが予想されること、今後の神経症状の悪化の懸念があることから手術が推奨される場合もあります。

    アジソン病

    アジソン病は副腎皮質機能低下症とも呼ばれ、副腎と呼ばれる臓器から放出されるホルモンが低下する病気です。症状は元気消失、食欲低下、嘔吐などがありますが、初期にはトリミングやホテル、通院といったストレスが加わったときにだけ症状が現れます。

    特徴的な症状がないため、「少し環境が変わって疲れたのかな」と見過ごされてしまうことも多いのですが、進行すると症状の発現頻度が高くなり、最終的にはショックに陥ることもある怖い病気です。

    こんな症状にも注意

    以下の様子や症状などが見られたときは犬の体調不良のサインです。大きな病気の初期症状の可能性もありますので動物病院を受診するようにしましょう。

    • いつもは帰宅すると玄関まで迎えに来るのに来ない
    • 寝ている時間が多くなる
    • 食欲がなくなる
    • 散歩に行きたがらない、あるいは散歩に行ってもすぐに歩きたがらなくなる
    • 呼吸に合わせて震える

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    犬に元気がない理由を探るために、さまざまな検査が必要になることも

    犬に元気がない理由を探るために、さまざまな検査が必要になることも
    (Dragon Images /shutterstock)

    愛犬はしゃべることができないため、気持ちが悪いのか、頭が痛いのか、お腹が痛いのかを伝えられません。

    元気がないことのみを理由に動物病院を受診した場合、視診・触診・聴診などで原因の予測がつけば検査を絞って行うことも可能です。しかし、大きな病気が隠れている可能性を考えると、検査を絞りすぎるのも危険です。

    元気がないことの原因を探るとともに、大きな病気がないかを見逃さないためにも視診、触診、聴診、体温測定に加え血液検査やレントゲン検査、超音波検査や尿検査などのスクリーニング検査が必要になってきます。

    元気がない理由がわかれば検査が不要の場合もある

    足を痛そうにしている場合は触診だけでもある程度の診断の予測が可能です。また、前日に人のご飯を食べた後から下痢が始まった場合は、食物関連の消化器症状と予想できます。

    最初の段階でそれ程多くの検査をしなくてもよいこともあるため、受診する際は症状が出始めた状況や、普段とどのように様子が違うのかなどを獣医師に伝えるようにしましょう。

    定期的な健康診断が重要

    定期的な健康診断が重要
    (Julia Zavalishina/shutterstock)

    愛犬の体調不良で検査をした際、大きな異常がないような結果だったとしても、健康診断時の血液検査やレントゲン検査などの結果と比較することで、早期に病気を見つけられることもあります。

    また逆に、検査で異常が見つかってもそれが以前からあったものであれば、今回の体調不良とは関連がないと判断できる場合もあります。

    このように、病気の早期発見、体調不良の迅速な診断のために、日頃の定期健診は非常に重要です。1歳を過ぎたら年に1回、7歳ごろからは年に2回の定期検診を行うことをおすすめします。

    飼い主さんが日頃からできる愛犬の健康チェックについては下記の記事をご覧ください。

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    検査しても異常が見つからなければそれはそれでOK

    検査しても異常が見つからなければそれはそれでOK
    (marketlan /shutterstock)

    検査で明らかな異常がなかったとしても、「緊急で対処しなければいけない大きな病気がないことがわかった」ということが重要です。

    点滴などの対症療法を行い、血液検査、レントゲン検査、超音波検査など一般的なスクリーニング検査では把握できない部分(特に脳や脊髄などの神経疾患)にも注意を払い、経過観察することで安心にもつながります。

    また初診時に、さまざまな理由から血液検査といった限定的な検査のみを行い、異常が見つからずに対症療法で様子をみることもあります。

    その際、対症療法で症状が改善しないようならレントゲン検査、超音波検査など、追加で検査を行うとよいでしょう。

    単一の検査では検出できる病気に限りがあることは心にとめておいてください。

    心配なことがあればかかりつけ医に相談

    心配なことがあればかかりつけ医に相談
    (SeventyFour /shutterstock)

    「元気がない」という症状が、大きな病気の初期症状である可能性も十分に考えられます。

    動物病院に連れて行くと、普段と違う環境に興奮して愛犬の元気が戻ったように感じられることもあるでしょう。しかし飼い主さんは、「ちょっと元気になったからもう少し様子をみよう」と判断をせず、お家での愛犬の様子を獣医師に相談してみてください。

    視診や触診、聴診や体温測定の結果に加え、犬種、年齢、性別、避妊去勢の有無といった状況から、可能性のある病気の説明や必要と思われる検査を提案してくれるでしょう。

    気軽に相談できる環境を作るためにも、日頃の予防医療や定期健診でのコミュニケーションを通して、かかりつけの獣医師と良好な関係を築いておくことも重要です。

    飼い主さんと動物病院が力を合わせて愛犬の健康を守っていけるとよいですね。

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    著者・監修者

    久保薗昌彦

    獣医師

    久保薗昌彦

    プロフィール詳細

    所属 ぞのペットクリニック  院長

    略歴 1988年 広島県に生まれる
    2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
    2013年 獣医師国家資格取得
    2013年~2016年 神奈川県の動物病院で夜間獣医師として勤務
    2016年~2019年 東京都内の動物救急センターに勤務
    2019年~2021年 ADACHI動物病院 院長
    2022年 ティアハイム浦和どうぶつ病院 開業
    2023年~ ぞのペットクリニックに病院名称変更

    資格 獣医師免許

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