「室内飼いだから大丈夫」と思っていても、何らかのタイミングで屋内に蚊が入ったり、散歩で外出したりした際に、犬が蚊に刺されてしまうことがあります。本記事では犬が蚊に刺されることによるリスクや症状、対処方法を解説します。
もくじ
犬が蚊に刺されることにより生じる、覚えて起きたい代表的な病気は3つ。
フィラリア症は犬が蚊に刺されることにより、蚊の体内に媒介する寄生虫(フィラリア)の幼虫が犬の体内に侵入し、最終的に成虫に成長し心臓や肺動脈に寄生する病気です。
また、犬も人と同様に蚊に刺されることでかゆみや赤み、腫れなどの皮膚炎を起こす蚊刺症を引き起こしたり、犬の体に入った蚊の唾液が原因でアレルギー反応が生じたりする場合もあります。
これらの項目を次項でさらに解説していきます。
フィラリア症とは、蚊が媒介する寄生虫疾患です。
フィラリアの幼虫に寄生された蚊が犬を刺すことで、犬の体内へフィラリアの幼虫が移行します。
犬の体内でフィラリアが成虫に成長し、心臓や肺動脈に留まることで咳、呼吸困難、腹水貯留(ふくすいちょうりゅう)などの心不全のサインを引き起こします。
重症化すると命にかかわる危険な病気です。
フィラリアは、予防薬を使うことで犬の体内に入った幼虫を駆除することが可能です。しかし、すでに感染している犬が予防薬を使用すると、大量のフィラリアが犬の体内で死滅してアレルギーなどを起こす場合があります。
そのため、予防薬を服用する際はすでにフィラリア感染症になっていないかの検査が必要です。
万が一フィラリアに感染していて症状が出ている場合は、外科的にフィラリアを摘出することもありますが、無症状であれば適切な内科治療によって生存も可能です。
フィラリア症は適切に予防をしていない場合、ペット保険の補償対象とならないのが一般的なため、治療費や感染した場合の危険性を考え、あらかじめ予防をしておくことが大切です。
【関連記事】
【獣医師監修】予防で防げる「フィラリア症」ってどんな病気?予防接種と同時に対策できるの?
犬が蚊に刺されると、人と同様に炎症が起き、局所的に赤く腫れたり、かゆみを感じて掻いたり舐めたりすることがあります。これを蚊刺症(ぶんししょう)といいます。被毛の少ない鼻先、まぶたや耳などの顔まわりが刺されやすい場所です。
人ほど大きな腫れになることは少ないですが、かゆみを我慢できず強く掻きむしったり舐めたりすることで、二次的な皮膚炎や感染症につながることがあるため注意が必要です。
炎症が軽度であれば冷やすなどの対処で経過を見る場合もありますが、大きく腫れたり、強いかゆみ・痛みを感じていたりする様子があれば、早めに病院を受診しましょう。
蚊が犬を刺す際、蚊の唾液が犬の体内に移行します。その唾液に含まれる成分がアレルゲンとなり、アレルギーを引き起こすことがあります。
アレルギーの症状は、
などがあります。
強いアレルギー反応が見られた場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。
【関連記事】
アレルギー性皮膚炎は犬の保険で補償される?検査方法や支払い事例も解説
【獣医師監修】ほんとうに怖い犬のアレルギー。愛犬を守るためにするべきこと
フィラリアの感染率は地域や気候、予防の普及率によって大きく異なるため一概にいえませんが、
適切な予防をしている犬のフィラリア感染率はほぼ0%です。
また、フィラリアの幼虫が蚊の体内で成長するためには、平均気温が14℃を超える日が続くなどの条件があります。
これらのことから、寒冷地に比べて温暖な地域のほうが感染リスクは高く、集団予防の観点から予防率が低い地域でも感染率が高くなると考えておきましょう。
皮膚炎(かゆみ、赤み、腫れ)が生じた場合は、氷や冷たいタオルで刺された部位を冷やしたり、犬用の塗り薬やかゆみ止めスプレーを使用したりして炎症を抑えましょう。
強いかゆみが生じているようなら、エリザベスカラーなどをして掻きむしりを防ぐことも有効です。急な体調不良など全身の異常が見られる場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。
フィラリア予防をしていない犬の場合は、動物病院を受診して予防を開始しましょう。フィラリア症は日頃からの予防が重要になります。
子犬が蚊に刺されたときも基本的には同様の対処を行いますが、過度の冷却は低体温症の原因になるため注意が必要です。また、塗り薬なども適切に使用しましょう。
蚊の発生を防ぐために、家の周囲の水たまりや湿った場所を定期的に清掃しましょう。網戸や防虫ネット、屋内外での蚊取り線香や虫除けスプレーの使用も有効です。犬に害がないよう、安全なものを選択してください。
早朝や夕方など蚊の活動が活発になる時間帯、草むらや水たまり、河川敷など蚊の幼虫であるボウフラの発生源になるような場所の散歩は近づかないようにしましょう。
犬用の虫除けスプレーや首輪を活用することもできます。人用の虫よけは犬にとって有害な成分を含む場合があるため、人用のものは避け、犬にとって安全なものを選択しましょう。長袖・長ズボンタイプの虫除けウェアを着用することで露出を減らし、蚊に刺されにくくすることも可能です。
ただし、犬用の虫よけスプレーや首輪はあくまでも「刺されにくく」するのみで、市販薬等では、蚊の吸血を完全に防ぐことはできません。フィラリア予防薬は国内では、要医薬品指示薬となっているため、必ず動物病院で、検査の上購入しましょう。
また、飼い主さんに蚊が寄って来ると犬が刺される機会も増えるため、飼い主さん自身の虫除け対策もしっかり行いましょう。
蚊に刺されることでフィラリア症にかかり重症化すると、残念ながら亡くなってしまうことがあります。また稀ではありますが、アナフィラキシーショックで亡くなる場合もあります。
フィラリア症は予防ができるため、忘れずに予防をしましょう。
しっかり予防できていれば、蚊に刺されてもフィラリアに感染する確率は低いでしょう。しかし、蚊に刺された部位の皮膚炎、アレルギー反応には注意が必要です。ほかの感染症を媒介することもるため、愛犬が蚊に刺されないようしっかり予防することをおすすめします。
人の虫刺されの薬には犬に合わない成分のものもあり、犬と人の皮膚構造の違いから薬の吸収率が異なる場合もあります。人用の外用薬を使用するケースもありますが、基本的には使用を避け、犬用の薬を使用しましょう。
犬が蚊に刺されると、フィラリア症など命に関わる感染症のリスクがあります。愛犬を守るために、蚊の発生しやすい時期には予防薬の投与や環境整備を徹底し、万が一刺された場合は速やかに適切な処置を行いましょう。
犬が蚊に刺されて治療や診察を行う際、ペット保険に加入していれば、皮膚炎やアレルギーはペット保険で補償されるのが一般的です。
しかし、フィラリア症は適切に予防をしていない場合補償の対象とはならないため、予防薬の飲み忘れなどがないようフィラリア予防をしっかり行い、蚊に刺された際は保険内容を確認しながら対応してください。