【獣医師監修】安心・安全な食を愛犬・愛猫へ与えるために。知っておきたい心構え|連載「獣医さんが教える愛犬・愛猫のごはんのキホン」vol.22
2023.06.02 作成

【獣医師監修】安心・安全な食を愛犬・愛猫へ与えるために。知っておきたい心構え|連載「獣医さんが教える愛犬・愛猫のごはんのキホン」vol.22

獣医師

成田有輝

成田有輝

これまで連載でさまざまなことをお伝えさせていただきましたが、もっとも大切なのは「基本を忘れないこと」「基本に立ち返ること」です。連載最後の今回は、栄養学を知る上で大切な心構えを紹介します。飼い主さんと愛犬、愛猫の生活が豊かに、そして健やかに過ごせますように。

前回の記事:【獣医師監修】犬や猫にサプリメントは必要?知っておきたいサプリメントの選び方と使い方|vol.21

もくじ

    【連載】飼い主さん必見!獣医さんが教える愛犬・愛猫のごはんのキホン

    人と動物の栄養学は大きく異なる

    【獣医師監修】安心・安全な食を愛犬・愛猫へ与えるために。知っておきたい心構え|連載「獣医さんが教える愛犬・愛猫のごはんのキホン」vol.22
    (Gladskikh Tatiana/shutterstock)

    日常生活の中で、栄養基準を気にして料理をしたり、食事を摂ったりしている人は少ないと思います。実は、人にも推奨される栄養基準があり、日本では5年に一度程度、基準が更新されています。

    一方、犬や猫はAAFCOや総合栄養食の基準に則した食事を主食とすることが推奨され、それを与えることが一般的になっています。これにより、栄養失調のような病気を一定の割合で防げていることを忘れてはなりません。

    人は人の栄養基準に近づくために栄養学を駆使します。対して、犬や猫の栄養学は、そもそも栄養基準通りの食事を食べているところから始まります。

    スタート地点が異なるため、肉と野菜の割合が何対何というような割合での管理や、人でいう「ひとかけ」「ひとまわし」のような計量をしない栄養管理は失敗を引き起こしてしまいます。

    ペットフードの茶色い粒の中には、動物たちの健康を守るために、たくさんの研究者が導き出した答えがつまっているのです。

    【関連記事】
    【獣医師監修】ペットフードの総合栄養食ってなに?ドッグフード・キャットフードの選び方|vol.1

    マーケティングに基づくものか、科学的に証明されているものかを見極めよう

    マーケティングに基づくものか、科学的に証明されているものかを見極めよう
    (eva_blanco/shutterstock)

    ぺットフードの販売は、ビジネスのひとつ。ほかの製品よりも「優れている」「安心できる」という表現がマーケティングとして一般的になっています。

    また、人と同じようにペットフードでも、新しい成分のブームがやってきては消えていくことを繰り返しています。

    古いものよりも新しいもののほうが目を引くような表現や謳い文句になっているため、試してみたいという気持ちになりますが、あまり精査されずに世の中に出ている製品もあるのが実情です。

    製品になっているから安全・よいものであると判断するのではなく、「ブームに乗ったマーケティングのひとつ」か「ちゃんとしたデータがあるものか」を精査しながら取り入れましょう。

    【関連記事】
    【獣医師監修】それって本当に正しいの?手作り食の情報の見極め方を解説します|vol.14
    【獣医師監修】犬や猫にサプリメントは必要?知っておきたいサプリメントの選び方と使い方

    トッピングや手作り食をするには、知識が必要

    トッピングや手作り食をするには、知識が必要
    (KucherAV/shutterstock)

    犬や猫のフードにトッピングする場合、栄養バランスの整った主食に何かを足すことで、基本的に栄養バランスの乱れにつながるということを、まずは知っておかなければなりません。

    またそもそも、手作り食で栄養バランスの整った主食を作るためには、非常にたくさんの計算が必要です。難易度が高く、本やインターネットの情報を見ただけでレシピを作成することは困難でしょう。

    一般的には、主食の栄養価が整っていて、1日に必要なカロリーの10%以内であれば、おやつやトッピングを与えても大きな問題ないといわれています。しかし実は、カロリーが10%以内であっても注意しなければならない食材はたくさんあります。

    犬や猫に与えてはいけない食材も含め、一つひとつの特性を知ることで、リスクを避けた食事管理ができるようになります。

    犬や猫のフードにトッピングをする際に気を付ける食材はこちらを参考にしてみてください。

    連載:トッピング編
    【獣医師監修】~煮干し・海藻・青魚編~トッピングをする際に気を付けたい食材| vol.11
    【獣医師監修】~サケ・レバー・鶏ささみ・オイル編~トッピングをする際に気を付けたい食材| vol.12
    【獣医師監修】~きのこ類・豆類・生モノ・乳製品編~トッピングをする際に気を付けたい食材| vol.13
    【獣医師監修】~タンパク質源となる食材の特徴と選び方~トッピング時に知っておきたいこと| vol.15
    【獣医師監修】~炭水化物源となる食材の特徴と選び方~トッピング時に知っておきたいこと|vol.16

    セカンドオピニオンも活用しよう

    セカンドオピニオンも活用しよう
    (SeventyFour/shutterstock)

    腎臓病のように栄養学が治療の中心となるケースもありますが、栄養学は健康維持のための土台や治療の補助となることが多いです。

    そのため、動物病院では病気や治療内容に関する説明が主体となり、食事についてお話をする時間があまりとれないこともあるでしょう。

    すると、飼い主さんがご自身で調べて、食事を選択することになります。愛犬・愛猫がどのような病気で、どういった食事制限が必要なのかを正しく理解しておかないと、誤った食事の選択をしてしまう危険性があるため、注意しましょう。

    食事の相談に乗ってくれる動物病院も多いため、食事管理に関する相談時間を取り、獣医師に相談をしてみてください。

    また動物たちの食事は、飼い主さんや獣医師など、人の考えに左右されやすいです。栄養学はほかの分野よりも生活に近く、エビデンスが取りにくいため、さまざまな考えや食事についてあまり詳しくない獣医師がいるのも確かです。

    セカンドオピニオンもうまく活用してみるとよいでしょう。

    栄養学や食事は万能ではない

    栄養学や食事は万能ではない
    (GoodFocused/shutterstock)

    世の中は非常にたくさんの製品にあふれかえっています。そのため、愛犬や愛猫が病気になったときに、食事やサプリメントでなんとかしようと考える飼い主さんもいるかもしれません。

    しかしまずは、日頃から病気にならないよう栄養基準にのっとった食事を日々与え、病気が見つかった際には、動物病院で標準医療を受けることが大切。診断があっての治療であり、栄養学も治療の一環になります。

    正しい診断や治療を受けず、食事やサプリメントだけでなんとかできることはまずないと、飼い主さんには知っていてほしいです。

    愛犬・愛猫の健康を守るために

    愛犬・愛猫の健康を守るために
    (Anastasiya Tsiasemnikava/shutterstock)

    「何でもよいものを試したい」という気持ちでいろいろなことを考え始めると、どうすればよいか本当に迷ってしまいます。情報に振り回されて、「栄養価の整った食事」がベースであることを忘れてしまう飼い主さんもいます。

    愛犬・愛猫を守る最後の砦は飼い主さんです。食事や栄養学の正しい知識を身につけることで、犬や猫だけでなく、飼い主さんにとってもよい時間が過ごせることを願っています。

    困ったら獣医師に頼ってみるのもひとつの方法です。この連載が、愛犬、愛猫の健康に少しでも役に立てますように。

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    著者・監修者

    成田有輝

    獣医師

    成田有輝

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)
    (ウサギの総合情報サイト「ウサギのハート」の運営)

    獣医腎泌尿器学会
    日本獣医エキゾチック動物学会

    略歴 1988年 埼玉県に生まれる
    2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
    2011年~ ウサギの総合情報サイト「ウサギのハート」公開
    2013年 獣医師国家資格取得
    2013年~2019年 東京都内動物病院に勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2019年 フードメーカー勤務
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許

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