【獣医師監修】犬の血尿の原因は?動物病院を受診する際のポイントや予防方法を解説
2022.02.15 作成

【獣医師監修】犬の血尿の原因は?動物病院を受診する際のポイントや予防方法を解説

獣医師

東 一平

東 一平

「愛犬の尿に血が混じっている」「尿の色が赤い、ピンク色をしている」「陰部から血がたれていた」「おしっこを拭いたら血がついていた」いろいろな場面で気がつく犬の血尿。発見したときに飼い主さんとして取るべき行動や、血尿に対する知識を紹介します。

もくじ

    おしっこに血が混じったり、陰部から出血があったら動物病院へ

    【獣医師監修】犬の血尿の原因は?動物病院を受診する際のポイントや予防方法を解説
    (New Africa /shutterstock)

    犬のおしっこに血が混じったり、陰部から出血したりすることは、基本的に異常なこと。何らかの病気が隠れていないか、かかりつけの動物病院を受診しておくと安心です。

    唯一といってよい例外は発情出血、生理出血です。この場合は、生理的現象なので病気ではありません。しかし、陰部の腫れ、乳腺の腫れ、落ち着きがないといった発情の兆候が認められても、その出血が病気由来のものである可能性はあります。

    飼い主さんが発情出血と病的出血を判断することは難しいため、一度動物病院へ連れて行くことをおすすめします。

    発情出血以外の血尿や出血は病気ですから、きちんとした診察、検査を行って原因を突き止めて治療をするようにしましょう。

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    血尿の原因は?

    血尿の原因は?
    (fongleon356/shutterstock)

    血尿の原因として、オス・メス共通して考えられるのは、膀胱炎、腎臓疾患、尿道炎、溶血性疾患、排尿部位腫瘍など。さらに、オスの場合は前立腺疾患と精巣疾患、包皮炎などが加わります。メスでは、子宮蓄膿症、子宮内膜炎、膣炎など生殖器疾患が加わります。

    膀胱炎とは?

    膀胱炎は、膀胱の内部にさまざまな原因で炎症が起きてしまうこと。その原因は、精神的なストレス、細菌、真菌、原虫、寄生虫、ウイルス、尿石、免疫反応、腫瘍、物理的刺激などが考えられます。

    腎臓疾患とは?

    腎臓疾患は、腎臓の働きである血液をろ過して水分と体に有害な物質を尿にして排泄する機能がおかしくなってしまうことです。血液が尿に漏れ出してしまうことで、血尿を引き起こします。

    血液が尿と混じって時間が経過することが多いために、鮮やかな赤色である潜血尿(せんけつ尿)ではなく、黒っぽい色の尿が出ることもあります。真っ黒い尿も危険なサインと考えてください。

    また、腎臓から尿管、膀胱、尿道、排尿口、このラインを排尿路と呼び、この部位に腫瘍ができてしまうとおしっこに血液が混じります。

    オスの前立腺疾患とは?

    前立腺はオスだけにある膀胱側の臓器で、特に去勢手術を行っていない犬や猫で問題を起こすことがあります。逆をいえば、去勢手術を行うことで大部分の前立腺や精巣の病気は予防することができます。

    メスの生殖器疾患とは?

    子宮蓄膿症、子宮内膜炎も避妊手術を行うことでほぼ100%予防できます。膣炎は排尿部位である膣の内部に炎症が起きてしまい出血をしてしまうことで、細菌感染やウイルス、腫瘍性の病気が多いです。

    血尿の検査や治療方法は?

    血尿の検査や治療方法は?
    (Syda Productions/shutterstock)

    原因が多岐にわたるため、それぞれに適した治療方法を選ばなければいけません。原因解明のための検査としては、尿検査、血液検査、超音波検査、レントゲン検査、造影検査、CT検査などを用いることが多いです。診察や問診で可能性を絞って、適切な検査を行ってもらいましょう。

    膀胱炎ひとつをとっても、ストレス性膀胱炎、細菌性膀胱炎、尿石性膀胱炎、腫瘍随伴膀胱炎などが存在しています。ストレス緩和治療や行動治療、食事療法、抗生物質や抗がん剤、免疫抑制剤の使用、場合によっては外科手術で治療を行うなど、原因に合わせてさまざまな手段を用いて治療します。

    一般論で語ることが難しく、その症例一つ一つに適切な治療を考える必要があるために、きちんとかかりつけの動物病院で診療を受けましょう。さらに、適切な治療を受け、反応を見て、最後までしっかりと治療を続けることが大事です。

    血尿検査を受ける際のポイント

    尿検査は、直接的に得られる情報が多いです。自宅で血尿があったら、受診前に病院で採尿用の道具をもらったり、お醤油などを入れる容器に集めて新鮮なおしっこを持参したりすると、動物病院の獣医師としては助かります。

    緊急性のある血尿

    緊急性のある血尿
    (Elayne Massaini/shutterstock)

    血尿を起こす病気の中には、命に関わる病気もあります。次の項目に当てはまるようなら、急いで病院を受診したほうがよいでしょう。

    • 出血量が多い
    • 尿の色が真っ赤・真っ黒
    • 尿が悪臭を放っている
    • 元気がない
    • 食欲などが落ちている
    • 水を飲む量が異常に増えている
    • 呼吸が早い
    • 排尿時に痛みを伴っている
    • 口の中の皮膚などが白っぽい
    • 皮膚に紫のアザのようなものが出来ている

    このほかにも多くのサインがありますし、軽症に見えても実は深刻な病気であることも考えられます。

    数日様子を見ても回復しない場合や、血尿を繰り返す場合は動物病院で診察を受けましょう。

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    血尿の予防方法

    血尿の予防方法
    (rfranca/shutterstock)

    一部の血尿は、食事やサプリメントによって予防的な対応が可能です。

    気になる場合は、膀胱粘膜の調子を整えたり、尿の正常を整えることで尿石などを予防したりできるものを日ごろから利用してもよいでしょう。

    食事に関しても、下部尿路疾患用のフードや尿石用のフードなどがあります。水分をきちんと摂取することが大切な病気も多いため、水分摂取量が少ない場合は、ドライフードよりもウェットフードのほうがよいでしょう。

    お水を楽しく飲めるような工夫も有効だと考えられています。

    まとめ

    まとめ
    (Przemek Iciak/shutterstock)

    血尿はおしっこだけの問題にとどまらず、大きな病気のサインである可能性があります。きちんと動物病院で診察を受け、原因を突き止めましょう。

    病気によっては治療が長くかかったり、日常ケアの継続が必要だったりする病気もあります。愛犬のためにも、最後までしっかりと治療してあげてください。

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    著者・監修者

    東 一平

    獣医師

    東 一平

    プロフィール詳細

    所属 株式会社アイエス 代表取締役
    アイエス動物病院(千葉県市川市) 院長

    日本小動物歯科研究会
    日本獣医皮膚科学会
    比較眼科学会
    日本獣医麻酔外科学会

    略歴 1978年 千葉県に生まれる
    1997年 麻布大学 獣医学部獣医学科入学
    2003年 獣医師国家資格取得
    2003年~2004年 アイエス動物病院に勤務
    2004年~2005年 東京都内の動物病院に勤務
    2005年 千葉県市川市のアイエス動物病院の院長に就任

    資格 獣医師免許

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