
冬になると人の間で流行するインフルエンザ。人では免疫力が低下していると重症化して入院が必要になり、場合によっては命を落とす怖い病気です。人のインフルエンザは猫に感染するのでしょうか。今回は、人のインフルエンザと猫のインフルエンザについて解説します。
もくじ

インフルエンザは、オルソミクソウイルス科に属するインフルエンザウイルスが引き起こす疾患です。4つの型(A、B、C、D)が知られていますが、主に問題視されるのがインフルエンザウイルスA型(IAV)です。
A型(IAV)は、2つのウイルス表面タンパク質であるヘマグルチニン(H)と、ノイラミニダーゼ(N)の抗原性に基づいて亜型が分類されます。H抗原は16種類、N抗原は9種類存在し、これらの組み合わせにより144種類のA型(IAV)亜型が生じます。
インフルエンザウイルスは遺伝的に非常に多様であり、遺伝子の変異や再集合などを起こして進化します。生物の種の壁を超えて新しい人獣共通感染症(動物と人で相互に感染が成立し、どちらでも問題になる病気)を出現させる可能性のある怖いウイルスです。
人ではA型、B型、C型のインフルエンザウイルスに感染しますが、猫ではA型のインフルエンザウイルスに感染することがあります。

猫がインフルエンザウイルスにかかると、通常は症状を示さないか、軽度の発熱を引き起こします。咳や鼻水などの上気道疾患はまれであり、自然に治癒することが多いです。
愛猫の体調が悪かったり、呼吸器症状が出ていたりするときには、動物病院に連れて行くようにしましょう。鼻の中に検査用の綿棒を入れて検体を採取し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)でウイルスRNAを検出することで、インフルエンザウイルスの診断が確定できます。
症状の重い猫では、猫から猫への感染を防ぐため、隔離をする必要があります。また、必要に応じて症状緩和や二次的な細菌感染を制御するための治療を実施します。現時点では、猫のインフルエンザのワクチンは市販されていません。
一般的に感染リスクは低いといわれていますが、猫から人へインフルエンザウイルスが感染した事例も報告されています。猫がインフルエンザになったときは不要な接触を最低限に抑え、手袋、マスク、ゴーグルなどを装着してお世話をするのが望ましいでしょう。
特に免疫の弱っている人や高齢者、乳幼児や妊婦の人は接触を避けるほうがよいでしょう。

過去に人の季節性のインフルエンザウイルスA型が猫に感染したという報告はあります。
猫は人よりも多様なインフルエンザAウイルス株に感染する可能性があり、異種間でのウイルスの伝播の受け皿となる可能性があります。人のインフルエンザだけでなく、ほかの動物に由来する株の感染の可能性も示唆されています。
猫自身の症状は軽微なことが多く重症化することはまれですが、猫の体内で遺伝子の変異や再集合が起こり、新しいインフルエンザAウイルスが発生する可能性が指摘されています。

飼い主さんがインフルエンザにかかった場合、猫に感染することはまれです。しかし基本的には、人の感染対策と同じように極力猫との接触を避け、生活環境を隔離することを心がけましょう。
顔を舐めさせたりするなどの過度なスキンシップも避けたほうが安心です。
万が一に感染した場合でも重症化することはまれです。大きな心配をする必要はありませんが、呼吸器症状が出ているようなら、念のため動物病院へ連れていきましょう。

人と動物の健康は密接に関連しています。人や動物の健康とそれを取り巻く環境が相互に繋がり、人獣共通感染症などのグローバルな健康課題に取り組むための統合的なアプローチを「One Health(ワンヘルス)」といいます。
猫をはじめとするコンパニオンアニマルの健康を管理し、新たなインフルエンザウイルスの出現に備えることは、公衆衛生上の重要な課題となっています。
人のインフルエンザは猫にうつる可能性がありますが、症状は軽微なことが多いです。
まれに重症化すること、公衆衛生上の問題があることから、飼い主さんがインフルエンザにかかった場合は、愛猫との過度な接触を避け、お互いの健康を守っていきましょう。
参考文献:
Guideline for influenza virus infections in cats.(European Advisory Board on Cat Diseases)
Influenza A Pandemic (H1N1) 2009 Virus Infection in Domestic Cat.(Sponseller BA, et al.)