【獣医師監修】犬の多頭飼いってどうなの?メリット・デメリットを解説
2023.07.25 作成

【獣医師監修】犬の多頭飼いってどうなの?メリット・デメリットを解説

獣医師

成田有輝

成田有輝

愛犬との暮らしを楽しんでいると、「もう1頭迎え入れたい」と考える飼い主さんも少なくありません。家族が増えることは喜ばしいのですが、ひとつの命を迎え入れるわけですから慎重に検討をしなければなりません。「こんなはずじゃなかった」という思いをしないために、犬の多頭飼いを始める前に知っておきたい、気をつけるポイントやメリット・デメリットを説明します。

もくじ

    犬の多頭飼いのメリット

    【獣医師監修】犬の多頭飼いってどうなの?メリット・デメリットを解説
    (thka/Shutterstock)

    犬同士のコミュニケーションが学べる

    犬同士がつながりをもつことで、ほかの犬とのコミュニケーションが円滑になる可能性があります。ほかの犬と触れ合うことなく1頭で過ごしていると、社会性を身に着けることが難しいです。

    特に、幼い頃にほかの犬との交流がないと、お散歩中にほかの犬に吠える・攻撃的になる、ドッグランで隅っこのほうでビクビクと臆病に過ごすといった問題に、飼い主さんが頭を悩ませることがあります。

    犬は社会性のある動物です。犬同士がつながりをもつことで、ほかの犬ともうまくコミュニケーションを取れるようになることは、飼い主さんだけでなく犬の喜びにもなります。

    先住犬のしつけがうまくいった場合、後からくる子は、苦労せずに社会性を身につけ、しつけができることがあります。

    お互いが遊び相手になる

    犬の性格によっては、散歩が嫌いで家から出たがらずまったく運動をしない子もいます。家の中に遊び相手がいると、ストレス発散・運動不足の解消となります。

    飼い主さんへの依存度が減る

    ほかの犬が増えることで不安な気持ちが減り、飼い主さんがいないときでも、穏やかに過ごせる可能性があります。

    飼い主さんと常に一緒にいる犬の中には、飼い主さんへの依存度が高く、飼い主さんと離れることで分離不安になることも。分離不安は、近所迷惑になったり、外出が難しくなったりすることもあり、行動学的な治療が必要になることもあります。

    分離不安の症状

    飼い主さんがいない間

    • ずっと鳴き叫ぶ
    • 物を壊す
    • 粗相をする
    • 自分のあしを噛む
    • 嘔吐や下痢をする

    飼い主さんがいる状況下

    • 常に飼い主さんの後ろをついて歩く
    • 飼い主さんの帰宅時に喜びでおしっこをする

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    犬の多頭飼いのデメリット

    犬の多頭飼いのデメリット
    (Alexandr Jitarev/Shutterstock)

    犬同士の性格が合わない

    先住犬と新しく迎え入れた犬の性格が合わず、トラブルになることも。相性が合わないと、同じ家の中で空間を区切って飼育する必要がでてくることもあります。

    先住犬が成犬で落ち着いており、新しく迎え入れた犬が子犬で元気いっぱいの場合、子犬は構ってほしさから先住犬にちょっかいを出すことが多いです。そこからケンカになったり、先住犬がストレスで体調を崩したりすることもあります。

    1頭で過ごすことを好む犬もいるため、可能な限り、迎え入れる前に相性チェックをしたほうがよいでしょう。

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    飼育費用がかかる

    当然ですが、食事やペットシーツなどの消耗品、ワクチン接種やノミ・ダニなどの予防費用も、飼育している犬の数だけかかります。そのため、多頭飼いをするには経済的余裕がなければなりません。

    健康なときはある程度かかるお金に予測がつきますが、病気になることも想定しておかなければなりません。

    悲しいことに2頭同時に大きな病気になることもあるため、ペット保険の加入や貯蓄をして、不測の事態に備えておく必要があります。

    それぞれに割く時間を考えなければならない

    2頭が仲良く過ごせれば、単純にコミュニケーションの時間が2倍になるわけではありません。しかし、相性が合わなければ、それぞれ散歩に行く必要があったり、食事を別で与えたりするといった工夫が必要になります。

    また、犬種や性格、年齢が異なれば、必要な散歩時間も異なるため、個別に対応しなければなりません。飼い主さん自身に時間的余裕があることが前提となります。

    問題行動が連鎖する場合がある

    片方に吠え癖や噛み癖などがあると、もう片方も同じ行動をすることがあります。

    問題行動が連鎖してからのしつけは大変なため、先住犬のしつけが終わってから、新しい子を迎えるようにしたほうがよいでしょう。

    トラブルの犯人が誰かわからなくなる

    たとえば飼い主さんが不在のとき、食べてはいけないものを食べた形跡があったり物を壊したりした場合、多頭飼いではどの犬が犯人かわからなくなることもあります。

    仕方なくすべての犬を動物病院で検査をしたり、注意する対象がわからず同じトラブルを繰り返したりすることがあります。

    人目がない状況では、ケージやサークルなどで住み分けをしたり、ペットカメラを利用したりするとよいでしょう。

    犬の多頭飼育で気を付けるべきポイント

    犬の多頭飼育で気を付けるべきポイント
    (New Africa/Shutterstock)

    必要な住環境は整えられるのか考える

    トイレが増えたり、それぞれ異なるフードを与えたりする必要が出た場合、空間の確保がしっかりできることも大切です。

    さらに高齢になると、寝たきりになって介護ベッドを置く必要が出てきたり、認知症で徘徊しても動き回れるよう大きなサークルを用意したりすることも検討しなければなりません。

    同じ血統の犬は、同じ病気にかかる可能性がある。

    同じ犬種を同じブリーダーから迎え入れると、新しく迎え入れた犬と、先住犬の間に血縁関係があることもあります。

    よい形質が遺伝することもあれば、悪い形質が遺伝することも当然あり、片方が遺伝性疾患を抱えていれば、同じ病気を発症する可能がでてきます。

    感染症はしっかり予防しないと、同時に感染する可能性がある

    1頭が感染すると、一緒に過ごしている犬すべてが集団感染することもあります。ノミ・ダニなどの外部寄生虫の予防やワクチン接種は、すべての犬でしっかりと行わなければなりません。

    マンションの規約で制限がある

    マンションによっては飼育する犬の大きさや頭数が決まっていることがあります。マンションの規約を確認しましょう。

    近い年齢の犬を迎え入れると、お別れが同時期にくる場合がある

    2頭同時に迎え入れたり、1頭飼い始めてすぐにもう1頭迎え入れたりすると、犬同士の年齢が近くなります。

    犬同士年齢が近いことは、お互いの遊び相手になったりするプラスの側面もあれば、お別れが同時期に来ることも考えなければなりません。

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    まとめ

    まとめ
    (Gelpi/Shutterstock)

    犬が増え、楽しみや喜びが増える分、金銭的・時間的・空間的な負担も増えていきます。

    先住犬が幸せに過ごせるのはもちろんのこと、新しく迎え入れる犬にもよい環境を提供できるよう多頭飼育は慎重に検討していきたいですね。

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    著者・監修者

    成田有輝

    獣医師

    成田有輝

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)
    (ウサギの総合情報サイト「ウサギのハート」の運営)

    獣医腎泌尿器学会
    日本獣医エキゾチック動物学会

    略歴 1988年 埼玉県に生まれる
    2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
    2011年~ ウサギの総合情報サイト「ウサギのハート」公開
    2013年 獣医師国家資格取得
    2013年~2019年 東京都内動物病院に勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2019年 フードメーカー勤務
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許

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