【獣医師監修】犬のオナラは臭い?一番オナラがくさい犬種とは
2017.09.04 作成

【獣医師監修】犬のオナラは臭い? 一番オナラがくさい犬種とは

獣医師

手塚光

手塚光

あなたの愛犬のオナラは臭いますか?オナラのニオイは腸内細菌のバランスや食事に影響されます。今回は、オナラが臭う原因や、オナラが手がかりになる病気について解説します。善玉菌を増やして悪玉菌を増殖しにくい環境を作ることで健康を維持しましょう。

もくじ

    そもそも、オナラとは何か

    【獣医師監修】犬のオナラは臭い?一番オナラがくさい犬種とは
    (Krakenimages.com/shutterstock)

    オナラとは、腸内細菌が食べ物を消化する際に発生したガスと、食べ物や水と一緒に飲み込んだ空気が混ざったものです。オナラの70%以上は食事などと一緒に飲み込んだ空気で、残りは腸内で発生したガスだといわれています。

    腸内ガスのほとんどは血液に吸収されて呼吸とともに排泄され、オナラになるのは腸内に残ったガスです。ちなみに、胃の中の空気が口から排泄されたものはゲップといいます。

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    犬のオナラは臭いのか?

    犬のオナラは臭いのか?
    (Anciens Huang/shutterstock)

    オナラのガスの99%は水素、メタン、二酸化炭素、酸素などの無臭ガス。残りの1%が、硫化水素、アンモニア、インドール、スカトールなどの悪臭を放つガスとなっています。つまり、悪臭を放つガスが多ければオナラは臭くなるのです。

    オナラのニオイの原因となる腸内細菌

    腸内細菌は、多い順から次の3つに分けられます。

    • 日和見菌
    • 善玉菌
    • 悪玉菌

    これら腸内細菌のバランスの崩れは大腸がん、肥満、炎症性疾患など多くの病気と関係しており、腸内細菌の乱れはオナラのニオイだけでなく、健康の乱れにもつながります。

    善玉菌とは

    善玉菌には、乳酸菌(Lactbacillus属など)やビフィズス菌(Bifidobacterium属)が分類されます。健康な犬の腸内環境はこれら善玉菌が優勢になっています。

    善玉菌は乳酸や酢酸などを作ることで腸内を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑えて腐敗物の産生を抑制や腸の運動を活発にするとともに、免疫機能を高める役割もあります。

    悪玉菌が産生する腐敗物は発がん性があることがわかっていることから、善玉菌はがんの予防にも関与していると考えられています。

    悪玉菌とは

    代表的な悪玉菌は、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)などです。悪玉菌はタンパク質や脂質を栄養としているため、肉を主体とした食事では悪玉菌が増殖し、上述したように発がん物質を産生します。

    日本でも、食事が欧米化してきたことで肉の摂取量が増加するとともに大腸がんの患者数が増えてきています。また、ストレスや便秘なども悪玉菌が増殖する原因になります。

    オナラが臭い理由:悪臭を放つガスは悪玉菌から産生される

    悪玉菌はタンパク質や脂質を餌にします。肉や肉の脂を多く摂っていると悪玉菌が硫化水素やアンモニアなどの悪臭を放つガスを産生します。

    対して、善玉菌は食物繊維やオリゴ糖などを餌に増殖し、これらを分解する際に発生するガスは水素、メタンなどの無臭のガスです。善玉菌の餌を多く含む食事を摂っている善玉菌が優勢になると共に産生するガスは無臭ですのでオナラは臭くありません。

    すなわち、オナラのニオイは腸内細菌や食べ物に影響されるといえるでしょう。

    腸の病気でもオナラは臭くなる!オナラが手がかりになる病気は?

    腸の病気でもオナラは臭くなる!オナラが手がかりになる病気は?
    (didesign021/shutterstock)

    病気がオナラのニオイの原因となっている可能性もあります。比較的遭遇しやすく気付きやすい、オナラが臭くなる病気を紹介します。

    便秘

    便が長時間溜まったままになると、腸内環境が乱れて悪玉菌が増殖し、オナラが臭くなります。便秘は、食生活だけでなく大腸がんやポリープなどにより便が出しづらくなることでも引き起こされます。

    未去勢のオスの場合は、高齢で前立腺肥大を起こし、大腸を圧迫して便が出しにくくなったり、前立腺癌で便秘になったりすることがあります。愛犬が便秘気味の場合は、便の形を注意深く観察してください。

    便の形が「平べったい」「つぶれている」などの様子があれば、前立腺の病気やポリープなどが存在する可能性があるため、動物病院の受診をおすすめします。

    寄生虫の感染

    腸管に寄生する寄生虫はさまざまなものがいます。代表的なものとしては回虫やコクシジウム、ジアルジアといったものが挙げられます。これらが感染すると腸内環境が乱されます。また、寄生虫は腸を傷つけたり炎症を起こしたりします。

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    膵外分泌不全

    膵臓が正常に機能しないことで起こります。膵臓はインスリンというホルモンを分泌して血糖値を下げる働きのほかに、腸に消化酵素を分泌して食べたものを効率よく吸収するのを助ける役割もあります。

    この消化酵素には、糖質を分解するアミラーゼ、タンパク質を分解するトリプシンやキモトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどがあり、これらが正常に分泌されることで、食べたものが効率よく体の中に吸収されます。

    しかし、この機能が損なわれると食べたものが分解できずに吸収することができません。吸収できなかった食べ物があることで腸内細菌のバランスが崩れ、オナラが臭くなります。

    • よく食べるのに太らない・痩せている
    • 便の色が白っぽい
    • 下痢や軟便をよく繰り返す
    • 異常なもの(石や土など)を食べたがる

    上記の場合は、膵外分泌不全が考えられます。

    膵外分泌不全になりやすい犬種

    特にジャーマン・シェパードは膵外分泌不全になりやすい犬種のため、体重の増え方や便の色を注意してみるようにしましょう。

    直腸のポリープや腫瘍

    直腸にできものがあるとそれが邪魔をして便が出せず、オナラだけが多く出ることがあります。しきりに踏ん張ったり、便に血が混じったりする事が多い場合には検査をしてもらいましょう。

    ポリープができやすい犬種

    会陰ヘルニア

    お尻の横の筋肉が薄くなり、そこから膀胱(ぼうこう)や腸が飛び出してしまう病気で、去勢をしていない中高齢のオスに多く見られます。

    排便で踏ん張ると通常は肛門の方向に便が押し出されますが、筋肉が薄くなるとそこに力が分散されて上手く便が出せなくなります。また、腸が蛇行するので便が腸の中に貯まりやすくなり、便が出せなくてオナラだけが多く出ることがあります。

    イレウス

    イレウスとは、腸が麻痺して動かなくなることをいい、食欲不振や嘔吐といった症状が見られます。腸の動きが鈍くなるため、本来であれば便と一緒に捨てられるはずの腸内細菌が残ってしまい、バランスが崩れることでオナラが臭くなることがあります。

    腸が麻痺する原因としては、細菌感染、ウイルス感染、食物アレルギー、中毒や膵臓の炎症などによるお腹の中の炎症が挙げられます。犬の腹痛はなかなか判断が難しいですが、 “プレイングポーズ”(お尻を上げて胸を床につける伸びをするような行動)を頻回にとる場合は、腹痛のサインであることが多いです。

    この病気に関しては発生しやすい犬種というのはいません。さまざまな病気からイレウスにつながることがあるため注意しましょう。

    腸閉塞

    腸が詰まっている状態をいい、犬で最も多い原因として異物の誤食が挙げられます。異物が腸にすっぽりはまり込むことで食べ物、水、唾液、胃液などが流れなくなり、完全に詰まると何度も吐いてしまいます。

    腸と異物に隙間があると、そこから食べ物や液体が流れて吐く回数が少ない場合もあります。これを不完全閉塞ということもあります。この場合、腸の中に長時間物が留まることで腸内細菌のバランスが崩れてオナラが臭くなったり、気持ち悪さから空気を飲み込むことでオナラの回数が多くなったりすることがあります。

    イレウスと腸閉塞の違い

    イレウスと腸閉塞の大きな違いは治療方針です。イレウスは内科的治療で改善することが多いですが、腸閉塞の場合は手術などの外科的な治療が必要になることが多いです。

    専門的な話になってしまいますが、以前はイレウスと腸閉塞は同じ意味で使われていました。しかし、イレウスと腸閉塞は原因が異なるため、現在ではしっかりと言葉を使い分けすることになっています。

    腸内環境が乱れやすい犬種は?

    腸内環境が乱れやすい犬種は?
    (thka/shutterstock)

    健康な場合には、腸内環境が乱れやすい犬種というのはいません。腸内環境が乱れるということは食生活や消化器の病気が原因です。

    食事に関していえば、先述の高タンパク質の食事以外にも、人の場合はネギやニンニクなどを食べてニオイが臭くなることがあります。しかし、犬はネギやニンニクで中毒を起こす可能性があるため与えてはいけません。

    また、ドッグフードに肉類を混ぜたり、肉類を主食にしたりしている場合には悪玉菌が増え、ニオイのもととなるガスが大量発生します。犬は肉食ではなく雑食のため、バランスよく食事を与えることが体調管理に適しているといえるでしょう。

    オナラの回数が多い場合

    オナラの回数が多い場合
    (kukurund/shutterstock)

    犬のオナラは、病気が原因で回数が増えていることもあれば、そうでない場合もあります。病気が原因になっている場合は、寄生虫感染症が考えられます。

    また、いつもいきんでオナラをしている場合には、直腸のポリープや会陰ヘルニアなど、腸に問題があってうまく便が出せていない可能性もあります。しきりに

    踏ん張ったりオナラが多かったりする場合は、一度動物病院に相談してみてください。

    病気以外の原因としては、フードの食べ方や犬種が関係してきます。オナラの大部分は飲み込んだ空気です。早食いや丸呑みをしている場合には、飲み込む空気が多くなり、オナラの回数も増えることがあります。

    パグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種は、口呼吸が多くなります。呼吸の回数も多く、口呼吸では鼻呼吸に比べると飲み込む空気の量が多くなる傾向にあります。

    このように、食べ方や犬種が理由でオナラの回数が多くなっている可能性もあるでしょう。

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    オナラの音がしない場合

    オナラの音がしない場合
    (WilleeCole Photography/shutterstock)

    例えば、早食いで多く空気を飲み込む、野菜や食物繊維を多く含むフードを食べている犬は、排出するガスが多くなるためオナラの音が大きくなることがあります。また、高タンパク食の犬の場合は、ガスが作られてオナラの音が鳴ることもあります。

    前者のオナラは空気の排出が主なため臭いませんが、後者は悪玉菌の影響で臭います。つまり、犬のオナラの音はあまり重要ではなく、臭いや回数、オナラの仕方などをチェックするようにしましょう。

    オナラのニオイを抑えるには

    オナラのニオイを抑えるには
    (Varvara Serebrova/shutterstock)

    オナラのニオイを抑えるには、善玉菌を増やして悪玉菌が増殖しにくい環境を作ることが大切です。これには次の2つの方法があります。

    生きた善玉菌を腸に届ける

    ひとつ目は、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を多く含むヨーグルトや納豆などの食品を食べ、腸に善玉菌を届ける“プロバイオティクス”という方法です。しかし、残念ながらいくら生きた善玉菌を多く摂ってもそれらが腸の中で住み着くことはないといわれているため、毎日これらの食品を食べる必要があります。

    善玉菌のエサとなる食品を積極的に摂る

    ふたつ目は、善玉菌の餌となる食品を食べることで善玉菌を増やす “プレバイオティクス”という方法です。善玉菌の餌となるものはオリゴ糖や食物繊維で、野菜類や豆類に多く含まれています。ただし、犬にとって害となる野菜などもあるため、獣医師に相談してから与えるようにしてください。

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    著者・監修者

    手塚光

    獣医師

    手塚光

    プロフィール詳細

    所属 名古屋夜間動物救急センター

    日本獣医麻酔外科学会
    日本獣医がん学会

    略歴 1983年 新潟県に生まれる
    2005年 酪農学園大学獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年 愛知県の動物病院に勤務
    2015年 愛知県のワシヅカ獣医科瑞穂病院に勤務
    2015年 酪農学園大学附属動物病院に勤務
    2017年 愛知県のワシヅカ獣医科瑞穂病院に勤務
    2017年 名古屋動物救急センターに勤務

    資格 獣医師免許
    RECOVERインストラクター

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