
高齢犬の10%は腎臓病になるといわれています。腎臓病になるとどのような症状が現れるのでしょうか。ステージ別の症状や治療法などをわかりやすく説明します。また、愛犬が腎臓病にかかった際に気を付けたい食事についてもご紹介します。
もくじ

腎臓病とは、腎臓の機能が徐々にまたは急激に衰えていく状態を指します。犬の腎臓病には、加齢や免疫が関与する病気、先天的な腎臓の奇形、結石、中毒などさまざまな原因があります。
腎臓の機能低下が3か月以上続いている場合を、慢性腎臓病(CKD)といいます。以前は慢性腎不全と呼ばれていましたが、現在では、機能障害が進行し生命維持に支障をきたすほどになった、より重篤な状態を「腎不全」というようになっています。
腎臓の主な機能をご紹介します。
血液をろ過し、不要な老廃物を尿として体外に排泄する機能を主な役割としています。
腎臓は血液から不要な老廃物をろ過して原尿を作ります。そこから必要なものを再吸収して体に戻したり、さらに不要なものを分泌したりすることで尿を生成します。
原尿の99%程度は再吸収され、最終的に1%程度が尿として排泄されます。
ろ過された原尿の中には、老廃物だけでなく体に必要な水分、電解質(ナトリウム、カリウムなど)、ブドウ糖、アミノ酸なども含まれています。
これらを体外に出さないよう、尿細管で必要な物質だけを血液中に再吸収し、浸透圧や体液量、pHを調整します。
腎臓は、赤血球を作るよう骨髄に指令を出すエリスロポエチンというホルモンを産生します。
腎臓でカルシウムやリンの調節を司るビタミンDが活性化され、機能を発揮します。ビタミンDは消化管からカルシウムやリンの吸収を促進し、腎臓からカルシウムの再吸収を促進します。
腎臓病は、急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)と慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)の大きく二つに分類されます。
数時間から数日の間で急激に腎機能が低下する病態です。原因は、中毒(不凍液、ブドウなど)、感染症(レプトスピラ症など)、重度の脱水、ショック状態、尿路の閉塞(尿管結石など)などが挙げられます。
症状の進行が非常に速いため適切な治療を迅速に行わなければ命に関わりますが、原因によっては腎臓の細胞が回復し、腎機能が改善することもあります。
慢性腎臓病(CKD)は、数週間から数ヶ月、あるいは数年にわたって徐々に腎機能が低下していく病態です。犬の腎臓病の中で最も多く見られるタイプで、一度失われた腎機能は基本的に回復しません。
| クレアチニン (mg/dL) |
概要と主な症状 | |
| ステージ1 | <1.4 | ほとんど無症状。 腎臓の機能が1/3ほどしか残されていなくても、クレアチニンの数値の上昇はありません。 |
| ステージ2 | 1.4〜2.8 | 元気で食欲があるものの、色の薄い尿を大量にし、水を飲む量が増え始めます(多飲多尿)。 腎臓の残された機能は1/3~1/4ほどです。 |
| ステージ3 | 2.9〜5.0 | 食欲低下や、口臭(アンモニア臭)、毛並みの変化、嘔吐や下痢などの症状が現れます。 腎臓の残された機能は、1/4~1/10ほど。 |
| ステージ4 | >5.0 | 激しい嘔吐下痢や痙攣、意識障害などが現れます。 残された腎機能は10%以下です。 |
犬の慢性腎臓病(CKD)の診断と治療方針の決定には、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS:International Renal Interest Society)が定めた国際的なステージ分類を用いるのが一般的です。
血液中のクレアチニン(Cre)濃度に基づいて、4つのステージに分けています。
多飲多尿の症状がでるステージ2か食欲の低下が出てくるステージ3で飼い主さんが気づくことが多いです。
※上記ステージ分類はあくまでも目安です。実際には、かかりつけの獣医師にご確認ください。

犬の腎臓病は、初期段階では症状が目立たないことが多く、早期発見には若いうちから毎年の定期的な健康診断が重要です。腎臓病が疑われる場合、以下の検査を組み合わせて総合的に診断します。
腎臓の異常を数値で表します。尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)だけでなく、カルシウム(Ca)、リン(P)、電解質(Na,K,Cl)、SDMAなども腎臓の状態を確認する上での指標となります。
腎臓病による貧血がないかの確認も行います。
腎臓の形や構造の異常を発見します。
尿の濃さ(尿比重)やタンパク質が漏れていないかなどを検査します。
腎臓に負担のかかる血圧になっていないかを測定します。
腎臓の組織を直接針でとることで、実際に腎臓で何が起こっているのかを診断します。

犬の腎臓病治療の目標は次の点に置かれます。
ステージや目的にあわせて次のような治療を取り入れます。
一般的に腎臓療法食と呼ばれる、リンやタンパク質を制限した食事を与えます。
この食事を与えたからといって、早いうちから効果を示すことはなく、リンやタンパクの制限が早すぎるのもよくないといわれています。
適切なタイミングで、食事療法を開始する必要があります。
療法食は獣医師の指導により給与の判断がなされるものです。リンやタンパク質の制限は各製品によって異なります。また、リンやタンパク質が低ければ他のものを与えても良いわけでないため、与える際には、獣医師に相談してください。
タンパク尿を抑えて腎臓病を悪化させない、血圧を下げて腎臓に負荷をかけないといった効果があります。
さまざまな薬の種類、剤形、味があり、病気の状態や投薬のしやすさなどを考え、獣医師が薬の種類を選択します。
活性炭は、尿毒素物質を腸の中で吸着し、便として排泄することで尿毒症を防ぎます。サプリメントなども販売されていますが、医薬品と効果が異なることがあるため注意が必要です。
リン吸着剤は、食事からのリンの吸収を抑制することを目的とします。
腎機能が衰えてくると、腎臓から血液を作るように促すホルモンであるエリスロポエチンが作られなくなり、腎性貧血を引き起こすことがあります。
このホルモンの代わりを注射で打つことで、造血を促します。
療法食は、栄養素の量を調整することで、病気に対して配慮されている食事のことです。他の食べ物をあたえるとその栄養バランスが乱れ、療法食を与えている意味がなくなってしまう場合があります。
「療法食はそれのみを与える」ことを前提として設計されているため、飼い主さんの判断でおやつを与えることがないようにしましょう。
さつまいもやかぼちゃなどの炭水化物が多く含まれる野菜はリンやタンパク質は多くはありませんが、それを腎臓療法食に追加(トッピング)して食べるということは、腎臓療法食の摂取量が減ることを意味します。
タンパク質の制限のし過ぎは、筋肉量の減少を引き起こし予後に影響する可能性があるため、与えるにしても量の計算が必要になります。
キャベツなどの野菜や果物に関しては、カロリーが少ないため、食欲が低下する病気である腎臓病にはよほど好きな場合を除き適した食材とは言えません。
腎臓療法食は極めて狭い範囲で調整がされている食事です。腎臓療法食に何かを追加する際には必ず獣医師に相談しましょう。
犬の腎臓病、特に慢性腎臓病(CKD)は、多飲多尿といった見過ごされがちな症状から始まり、進行すると嘔吐、食欲不振、脱水、痙攣などの重篤な尿毒症症状を引き起こします。
一度失われた腎機能は元に戻りません。早期発見と早期治療が病気の進行を遅らせ、愛犬の生活の質(QOL)を保つ鍵となります。
日頃から、体重測定や飲水量の確認、尿の量や濃さを確認し、少しでも異変があったら動物病院を受診しましょう。
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