
インフルエンザというウイルスはもちろん聞いたことがあると思います。インフルエンザは日本においても毎年流行して問題になっています。インフルエンザは人だけでなく、鳥や豚などさまざまな動物に感染します。では犬はどうでしょうか?長らく犬はインフルエンザに免疫があると言われてきましたが、近年、犬へのインフルエンザの感染が報告され始めました。今回は最新の知見も交えながら犬インフルエンザの解説をしていきます。
もくじ

毎年、世界規模で流行して多数の死者を出しているインフルエンザ。人だけでなくさまざまな動物に感染し、鳥(鳥インフルエンザ)や、馬、豚、アザラシ、ミンクなどでも集団発生や流行が指摘されています。
インフルエンザは基本的に同じ種の中で伝染しますが、まれに鳥や豚から人に感染するなど、ほかの種の動物に感染することが報告されています。
またインフルエンザはいくつかの種類(型)があり、人が予防接種を受けても異なる種類のインフルエンザに感染したり、同じ年に2回インフルエンザにかかったりすることもあります。
人においてインフルエンザはどの種類も基本的に、鼻、喉、気管など呼吸器に感染します。鼻水、咳、発熱などを引き起こし、下痢などの消化器症状がでる場合もあります。
重症化すると肺炎やインフルエンザ脳症を引き起こし、命に関わることもあります。
人以外の動物でも、重症度の差はありますが、呼吸器症状や下痢を引き起こすことが多いです。

一方、長らく犬のインフルエンザの集団発生は報告されず、犬はインフルエンザに対して免疫があると考えられてきました。
しかし2005年と2008年に、アメリカで初めて犬のインフルエンザウイルスが報告され、いくつかの種類が確認されています。[1]
代表的な種類を3つご紹介します。
犬インフルエンザの中で、最初にアメリカで確認された型です。発熱、くしゃみ、寝ていることが多いなどの症状を示します。2016年ごろからは徐々に減ってきているようです。
韓国の犬の間で流行している種類です。さまざまな動物に感染することが確認されており、猫への感染の報告もあります。
現時点では報告はないですが、ニワトリ、ブタ、マウス、モルモット、フェレットなどにも感染のリスクがあると考えられています。
東アジアの鳥インフルエンザとかなり近い構造で、呼吸器の症状を示しますが、症状は比較的軽いことが多いようです。
2010年、2012年、2014年、2019年に、タイやイタリアでパンデミックが報告されており、猫への感染も確認されています。症状は比較的軽いことが多いようです。
2025年8月現在、日本では散発的な発生は起こっているものの、大規模な流行は確認されていません。今後の動向を注意して見ていく必要はあるでしょう。

結論から言うとインフルエンザは、犬への感染の報告はありますが、犬から人への感染の報告はありません。
2009年に人の間でパンデミックを引き起こした新型インフルエンザ(H1N1型)や、毎年冬に流行する季節性インフルエンザ(香港型ともいわれる、H3N2型)などは、人から犬への感染が報告されています。[1]
一方、インフルエンザが犬から人に感染したという報告はまだあがっていません。
ただし、報告がされていないだけで感染するリスクがないわけではありません。今後、感染の報告がでてくる可能性はあると考えておきましょう。

人や犬がインフルエンザにかかった場合、次の点に気をつけましょう。
ポイントを解説します。
人から犬へインフルエンザが感染する可能性があります。犬はインフルエンザに感染しても軽症ですむことが多いですが、まれに重症化することもあるため、犬との接触はなるべく避けましょう。
犬に移さないために、次のような対策が有効です。
今のところ、犬から人への感染報告はないものの、感染するリスクはゼロではありません。
過度に人への感染を心配する必要はありませんが、高齢者、乳幼児、妊婦などリスクのある人は、インフルエンザに感染した犬との接触をさけるほうがよいでしょう。

【ポイント】
犬インフルエンザも呼吸器の症状を引き起こします。無症状の場合もありますが、軽い症状としてくしゃみ、鼻水、咳、食欲不振などが見られることもあります。症状は7~10日ほど続き、問題なく回復することが多いです。
しかし、重症化すると42℃ほどの高熱、呼吸困難、肺炎などが見られ、細菌感染などと合併するとさらに悪化しやすくなります。
犬インフルエンザは無治療で治ることもありますが、基本的には対症療法が用いられます。症状が強い場合は点滴や抗生剤を使用します。呼吸困難が見られる場合は、酸素室の設置や入院が必要になる可能性もあります。
犬インフルエンザにはワクチンもありますが、日本では取り扱っている動物病院は少ないです。健康な犬なら感染しても軽症で済むことが多く、定期的なワクチンの接種は推奨されていません。

パラインフルエンザも呼吸器に感染する病気ですが、名前は似ていますがインフルエンザとパラインフルエンザは全く別の病気です。
犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)の原因のひとつとされ、症状は鼻水や咳などがメイン。重症化すると肺炎や呼吸困難を引き起こす場合があります。
パラインフルエンザは犬から犬への感染力が強く、特に子犬に感染しやすいですが、人に感染しないといわれています。ワクチンで予防でき、日本で一般的に受けられる犬の混合ワクチンにも含まれています。
犬から人へのインフルエンザ感染は報告されていませんが、人から犬にうつることがあります。今のところ犬が感染しても軽症で済むケースが多いですが、ウイルスが増殖する過程で変異し、症状や感染力が強くなる可能性もあります。
過度に心配する必要はありませんが、愛犬に咳や発熱、元気消失、食欲低下などの症状がみられた場合は動物病院を受診しましょう。特にご家族がインフルエンザにかかられていた場合は、インフルエンザに感染している可能性があります。
参考文献
[1] Influenza A viruses circulating in dogs: A review of the scientific literature
Open Vet J. 2022 Sep 15;12(5):676–687. doi: 10.5455/OVJ.2022.v12.i5.12