
飼い猫が皮膚をかゆがったり、下痢をしたり、咳やくしゃみをしたり。「ひょっとしてこれってアレルギー?」と思うことがあるかもしれません。人間にもアレルギーがあるように猫にもアレルギーがあります。今回は猫のアレルギーについて主な症状や診断方法、対処法についてご紹介します。
もくじ

アレルギーとは、免疫反応にもとづく生体に対する全身的または局所的な障害のことです。
免疫とは、自己と非自己を区別して外敵を排除する働きのこと。免疫があることで、病原微生物に対する防御反応や、がん化した細胞の排除などが起こります。
しかし中には、特定の物質(アレルゲン)に異常な反応を示し、過剰に自分の体を傷つけることがあります。これをアレルギーといいます。
アレルギーはアレルゲンの侵入経路から以下の3つに分類されます。
花粉やカビなどを吸い込むことで発症します。主に喘息や鼻炎などです。
特定の食物が体内に入り、免疫が過剰に働くことで発症します。皮膚の症状や消化器症状、呼吸器症状など、さまざまな症状を起こします。
アレルゲンが皮膚に直接触れることで発症します。主にかゆみや赤みなどの皮膚症状です。
アレルギーは、免疫反応の起こり方によっても4つに分類されます。
IgE抗体と呼ばれるタンパク質が原因になるアレルギーで、花粉症や喘息などがあります。
抗体が自身の細胞と結びつき、敵だと認識することで起こるアレルギーです。自己免疫性溶血性貧血や血小板減少症などが挙げられます。
抗原と抗体が合わさった複合体となり、血流にのって運ばれながら全身組織を攻撃するものです。関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどがこれにあたります。
T細胞と呼ばれるリンパ球が、炎症のきっかけとなるサイトカインを放出することで起こるアレルギーです。アトピー性皮膚炎などです。

猫のアレルギーは2021年に定義が見直され、猫アトピー症候群(FAS)と呼ばれるようになりました。FASには以下のものがあります。
猫のアレルギー性皮膚症状は、特徴的な所見をともなう掻痒を主症状とします。
頭頸部掻破痕
顔面・頭部・頚部のかゆみで擦過傷、びらん、潰瘍を生じる
自己誘発性脱毛
自分で繰り返し舐めたり、噛んだりすることで脱毛する
好酸球性皮膚炎
好酸球という炎症細胞が皮膚に出現する
粟粒性皮膚炎
皮膚にブツブツと丘疹が出てくる
FASSはかゆみをともなう皮膚症候群のこと。上記のような皮膚症状が特徴で、少なくとも1つ以上の症状が認められます。
猫に見られる炎症性で、環境アレルゲンに対する異常な複合免疫反応によって引き起こされるとされています。
診断
適切な診断手順が必要であり、皮膚の感染症や食物アレルギーの除外が必要です。
治療
免疫抑制剤(シクロスポリンなど)やステロイド、JAK阻害剤(オクラシチニブなど)が挙げられます。基本的に完治する病気ではないため、生涯付き合っていく必要があります。
FADはノミによって引き起こされるアレルギーが原因で起こる、アレルギー性皮膚疾患のひとつです。
FASSと類似した皮膚症状を引き起こしますが、FADには地域性や季節性が出てくる点が異なります。
診断
厳密な2か月間のノミ駆除を実施した時点で皮膚症状が消失するようであれば、FADと診断されます。
治療
治療は、ノミの駆除をすることです。
食物アレルギーでは、皮膚症状とともに嘔吐や下痢などの消化器症状が出ることもあります。
食物に含まれるタンパク質が原因となり、かゆみなどのFASSと似た皮膚症状、下痢・嘔吐などの消化器症状が現れます。
診断
除去食試験や食物負荷試験が用いられます。
肉類、魚類、乳製品や卵、穀物に加えて、キャットフードに含まれる添加物が原因物質(アレルゲン)になることがあり、診断が難しいこともあります。
治療
アレルゲンを特定し、食事管理をすることが中心になります。
咳やくしゃみなどの呼吸器疾患を引き起こすアレルギー疾患で、猫喘息が挙げられます。
猫にみられるアレルギー性疾患のひとつで、特定のアレルゲンを持続的に吸入することで生じるⅠ型アレルギーとされています。
吸入されたアレルゲンがIgE抗体を介して肥満細胞と結合し、アレルギー反応が起こります。
すぐに出る症状では、気道収縮に起因した発作性の呼吸困難が引き起こされます。
遅れて出る症状としては、好酸球が主体となって気道の炎症を引き起こし、これが持続することで気管が腫れたり、粘液の分泌が過剰になったりします。
ダニや花粉などの環境抗原のほかに、タバコの煙や香水なども刺激因子になることがあるので注意が必要です。
診断
咳や呼吸困難などを起こすほかの疾患(心臓病や肺炎、肺腫瘍など)を除外する必要があります。
注意深い問診や身体検査、血液検査、画像検査、アレルギー検査、気管支鏡検査など複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。
治療
重症例では、酸素吸入が必要です。ステロイドや気管支拡張剤を静脈内注射すると同時に、気管支拡張剤を吸入させます。
呼吸状態が落ち着くようであれば酸素室から離脱し、ステロイドや気管支拡張剤は注射から内服や吸入に切り替えて自宅管理にしていきます。
アレルゲンを特定できた場合はそれを除去します。特定できない場合は、空気清浄機の設置など生活環境を改善していくことが重要です。

猫のアレルギー疾患の仕組みはまだわからないことが多いです。特定の品種や環境によって、皮膚の微生物叢(びせいぶつそう)が影響を受けることが報告されていることから、遺伝的な要因も関係している可能性が示唆されています。
発症を予防することは難しいですが、症状を緩和するためには、こまめな掃除や換気、ブラッシングなどのケア、不特定な食事を与えないことなどが挙げられます。
今回は、皮膚や消化器、呼吸器に症状が出る猫アトピー様症候群について紹介しました。
軽度なうちにアレルゲンの特定や治療ができれば、重症化せずに済むことがあります。少しでも当てはまりそうな症状がある場合は、かかりつけの先生に相談してみてください。