2025.09.09 作成
獣医師
成田有輝
季節によってはスーパーで見かけることも多い梨ですが、犬が食べても問題はありません。どれくらいの量なら与えてもよいのでしょうか。犬に梨を与える際の基礎知識や、注意点を紹介します。
もくじ
梨は犬に対して毒性のある食べ物ではないため、基本的には与えても問題ありません。しかし、与え方や量を間違えると、消化不良などの原因となってしまいます。犬に梨を与える際は、次の点に注意しましょう。
消化が難しい部位は取り除いて与えましょう。外皮や芯などを与えると消化不良で嘔吐や下痢を引き起こす可能性があります。芯や種が消化管につまって閉塞する可能性もあるため気をつけてください。
犬は食べ物を噛まずに飲み込むことが多いため、大きいまま食べてしまうと食道でつまることがあります。細かく切り分けて与えましょう。
離乳したばかりの子犬はお腹の調子が整っておらず、消化不良を起こしやすく、下痢や嘔吐を起こすと必要な栄養をとることができません。そのため、お腹の調子が整うまでは、総合栄養食のフードでバランスよく栄養を取ることが優先されます。
梨には毒性はないため、子犬が食べても問題はないですが、消化不良や総合栄養食のフード以外でお腹がいっぱいになり栄養バランスが崩れる可能性を考えると、積極的に与える必要はないでしょう。
与える際はお腹の調子が安定しているタイミングで少量から与えてください。
和梨も洋梨も犬にとって毒性のある成分はないとされているため、与えても大丈夫です。
梨のジュースやジャム、シロップ漬けの缶詰などの加工品には、多くの砂糖が使われています。犬に与えるのは避けましょう。梨の木のおもちゃ
梨の木でつくられた動物用のおもちゃもあります。梨の木にも毒性がないため遊ばせても問題ありません。
しかし、かじって先が鋭利な状態になったり、大きな状態で飲み込んでしまったりすると大変危険です。飼い主さんが見ている間だけ、遊ばせるようにしましょう。
梨にはカリウム、食物繊維、ビタミンCなどの栄養素も含まれますが、ほとんどが水分と果糖などの糖類でできています。栄養組成の整った総合栄養食のドライフードを食べている状況で、栄養摂取を目的にあえて梨を与える必要はありません。
犬はビタミンCを体内で合成できるため、ビタミンC摂取のために梨を与える必要もありません。
果物は栄養摂取のためではなく、嗜好品として与えるという意識が大切です。
初めて梨を与える際は、少量から始めて、愛犬の反応をよく観察することが重要です。 特に、梨以外にもアレルギーがある場合、交差反応が起こる可能性があるため、注意が必要です。
犬のアレルギーには、大きく分けて、環境因子による犬アトピー性皮膚炎と、食物による食物アレルギーの２つがあります。
一般的に、特定の物質に対して、過剰に反応することをアレルギーと呼び、たとえば小麦アレルギーなら小麦を食べると症状（皮膚の赤み、かゆみや嘔吐、下痢など）を起こします。
しかし中には、食べ物や環境因子の類似するタンパク質の構造に反応することがあり、これを「交差反応」と呼びます。
犬の交差反応について詳しく調べられていないため明確なことはいえませんが、梨はバラ科の植物で、同じ科に属するリンゴなどの果物に類似するタンパク質が存在し、人の場合は、それに反応することがあるといわれています。
また、シラカバやハンノキなどの花粉と交差反応を示すことがあります。
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梨などの嗜好品を与えすぎで肥満になったり、総合栄養食のフードが食べられず栄養バランスが乱れたりしないように、カロリーや栄養を考えて与えましょう。
一般的に、犬のおやつは１日に必要なカロリーの10%程度までにとどめるべきといわれています。体重1kgの犬が１日に必要なカロリーは約100kcal程度ですので、その10%だと10kcalとなります。
日本梨（生）のカロリーは100gあたり38kcal程度。梨１個は300～400gほどですから、体重1kgの犬に梨をおやつとして与える場合は、1日最大で一般的なサイズの１個の1/12程度（25ｇ）までとなります。
（日本梨1個可食部300g。1個114kcalとして算出。参考：文部科学省の食品成分データベース）
１日に必要なカロリーと体重は比例していないため要注意です。おやつとして梨のみを与えた場合の最大量の目安を計算してみましょう。
体重3kgの犬の標準的な1日の摂取カロリー：約220kcal
おやつとして与えられる梨の量は、1/6個程度
体重5kgの犬の標準的な1日の摂取カロリー：約330kcal
おやつとして与えられる梨の量は、1/4個程度
体重8kgの犬の標準的な1日の摂取カロリー：約460kcal
おやつとして与えられる梨の量は、1/3個程度
実際は、現在摂取している食事のカロリーや梨以外に与えているトッピングやおやつのカロリーを考慮した上で、梨の摂取量を調整してください。
一度に最大量を与えると嘔吐や消化不良になったり、尿のpHがアルカリ性に傾いたりすることがあります。
与えるにしても少量から始め、尿石症に過去にかかったことがある場合は定期的な尿検査がおすすめです。
与え方の注意点や摂取カロリーを守っていれば、犬が梨を食べても問題ありません。
しかし、人の感覚だけでカロリーを正確に測るのは難しく、実際のカロリーとは大きくかけ離れていることが少なくありません。感覚で与えていると、消化器症状を引き起こしたり、長期的には栄養素の過剰や欠乏を引き起こしたりする可能性があります。
犬の１日の摂取カロリーをしっかり計算しておやつを与えると安心です。
成田有輝
獣医師
プロフィール詳細
所属
yourmother合同会社 代表
(獣医によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)
(ウサギの総合情報サイト「ウサギのハート」の運営)
獣医腎泌尿器学会
日本獣医エキゾチック動物学会
略歴
1988年 埼玉県に生まれる
2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
2011年～ ウサギの総合情報サイト「ウサギのハート」公開
2013年 獣医師国家資格取得
2013年～2019年 東京都内動物病院に勤務
2018年～ DC one dish 設立
2019年 フードメーカー勤務
2020年～ yourmother合同会社 設立
資格 獣医師免許
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獣医師/ペット栄養管理士
岩切裕布
