【獣医師監修】犬も風邪をひく?症状や治療法は?知っておきたい犬の風邪
2023.05.16 作成

【獣医師監修】犬も風邪をひく?症状や治療法は?知っておきたい犬の風邪

獣医師/ペット栄養管理士

岩切裕布

岩切裕布

「犬も風邪をひくの?」と気になっている飼い主さんは多いでしょう。結論からお伝えすると、犬にも風邪の症状がみられることはあります。しかし、人とまったく同じ症状が出るわけではありません。犬の風邪とは何か、症状や治療法、人の風邪との違いについて解説します。適切に対処できるよう、犬の風邪について理解を深めましょう。

もくじ

    愛犬の咳や鼻水は風邪?それとも体調不良?

    【獣医師監修】犬も風邪をひく?症状や治療法は?知っておきたい犬の風邪
    (WilleeCole Photography/shutterstock)

    人の風邪とは一般的に、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、たん、発熱、のどの痛みといった上気道(鼻やのど)に急性の炎症を起こす症状を総称したものを呼びます。正式には「風邪症候群」といい、「風邪」という病原体がいるわけではありません。

    犬に人の風邪と似たような症状が見られて動物病院を受診すると、獣医師から「風邪」といわれることがあります。しかしこれは、飼い主さんにわかりやすいよう例えているものであり、実際には「風邪」という診断名がつくことはありません。

    犬に風邪のような症状が見られた場合、複数のウイルスや細菌の感染によって引き起こされる呼吸器の病気である「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」であることが多いです。

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    ケンネルコフって何?

    ケンネルコフって何?
    (memorable9/shutterstock)

    「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」は、「ケンネル=犬」「コフ=咳」という意味で、「犬の風邪」とも呼ばれます。

    ケンネルコフは、以下のウイルスや細菌によって引き起こされることが知られています。

    • 犬パラインフルエンザウイルス
    • 犬アデノウイルスⅡ型感染症(犬伝染性喉頭気管炎)
    • マイコプラズマ
    • ボルデテラ・ブロンキセプチカ(気管支敗血症菌)

    ケンネルコフはこれらの病原体が単独、または複数感染することで発症します。

    ケンネルコフの主な症状

    ケンネルコフの症状としては、次のようなものが挙げられます。

    • くしゃみ
    • 鼻水
    • 発熱
    • 目の炎症
    • 元気喪失
    • 無気力
    • 食欲不振

    特に、子犬を迎え入れた直後に「コンコン」「ケフケフ」と人と同じような咳をしたり、「くしゅん」とくしゃみをしたり、発熱や突然の食欲低下で、飼い主さんが気づくことが多いです。

    最初は1日に数回だった咳が、時間の経過とともにひどくなる場合は注意しましょう。

    犬の風邪の予防法

    犬の風邪の予防法
    (Tatyana Vyc/shutterstock)

    犬の風邪の予防法には、次のものがあります。

    ワクチン接種

    犬の混合ワクチンには、2種からありますが、一般的に予防接種として選択されるのは5~10種が多いです。5種以上であればパラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルスⅡ型を予防することができます。

    ワクチン接種で予防できる病気は、免疫が未熟な子犬では、特に重症化しやすいため、予防接種で病気の感染を予防しましょう。また、万が一感染してしまった場合でも、重症化を防ぐ役割があるためワクチン接種が望まれます。

    迎え入れる前の予防接種情報を入手すると安心

    犬を迎え入れる場合は、迎え入れた先から「いつ」「何回」「どんな種類」のワクチンを接種したかの情報をもらいましょう。通常は接種したワクチンに対してはワクチン証明書が発行されています。

    また、ボルデテラが含まれるワクチンもありますが、ペットショップやブリーダーの元にいるときに接種していることが多く、ご自宅に迎え入れてから接種することは比較的少ないです。

    ワクチン以外の一般的な対策

    人と同様、寒暖差が激しかったり、強いストレスがかかったりすることで、犬も風邪を引くことがあります。

    特に迎え入れたばかりの子犬は、環境変化によるストレスがかかっているため、自宅に慣れるまでは安静にゆっくりと過ごすことが重要です。

    風邪は通常、犬から人、人から犬へは感染しない

    風邪は通常、犬から人、人から犬へは感染しない
    (4 PM production/shutterstock)

    犬の風邪を引き起こす病原体は、種類によって感染力が非常に強く、空気中に浮遊する飛沫を介して感染します。そのため、犬同士では同じ空間にいることが、感染リスクになります。

    しかし、犬と人の風邪は病原体が異なるため、通常は犬から人へ、人から犬へと感染することはまずありません。

    人の風邪薬を与えないで

    人の風邪薬を与えないで
    (Alena Zharava/shutterstock)

    人が風邪をひいたときは、風邪薬を飲むことが多いです。犬にも人の風邪薬を与えようとする飼い主さんもいますが、体重や薬の効き具合も異なり、人の風邪薬を与えることで重篤な症状を示すこともあります。

    また、人の風邪薬に使用されている成分に、犬の薬として使用しないもが含まれていることもあるため注意しましょう。

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    怪しいなと思ったら動物病院へ

    怪しいなと思ったら動物病院へ
    (Yana Vasileva/shutterstock)

    人の風邪と同様に、犬の風邪の原因がウイルスの場合は、基本的には対症療法になることが多いでしょう。原因が細菌の場合は、抗菌薬による治療がメインとなります。

    症状の程度によって、注射・飲み薬・ネブライザー(薬を霧状にして吸わせる吸入器)を使用するのかなど、治療の種類や方法は大きく異なります。

    風邪で治療費が高額になることは少ない

    風邪症状で手術をしたり、長期間入院をしたりすることは珍しいため、比較的治療が高額になるケースは少ないでしょう。

    しかし、動物病院へ行こうか迷っている間に症状が悪化すると、治療期間も費用もよりかかることになります。そのため、早めの受診が望まれます。

    子犬は特に注意

    特に治療をしなくても免疫でウイルスを排除し、症状が治まることもあります。しかし、場合によっては重症化し命にかかわることもあるため、安易に考えてはいけません。

    特に子犬は症状の変化が速いため、経過をしっかりと見ていく必要があります。

    まとめ

    犬の風邪、特にケンネルコフは子犬では比較的よくおこる病気です。迎え入れる際には、近くの動物病院を先に探しておいたほうが安心です。

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    著者・監修者

    岩切裕布

    獣医師/ペット栄養管理士

    岩切裕布

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)


    日本ペット栄養学会
    日本小動物歯科研究会
    日本獣医腎泌尿器学会

    略歴 1987年 東京都に生まれる
    2005年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年~2016年 都内動物病院に勤務
    2017年~2018年 フードメーカー勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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