猫が「ゴロゴロ」のどを鳴らす意味と仕組みは?言わない猫もいるって本当?
2020.02.19 作成

猫が「ゴロゴロ」のどを鳴らす意味と仕組みは?言わない猫もいるって本当?

PNS編集部

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猫がのどを「ゴロゴロ」慣らす姿はかわいいものです。でも、この「ゴロゴロ」音には意味があるのでしょうか。そう、実は猫がのどを鳴らすのには理由がちゃんとあるのです。今回はそんな猫のゴロゴロを解説していきましょう。

もくじ

    猫はどうして「ゴロゴロ」とのどを鳴らすのか

    猫が「ゴロゴロ」のどを鳴らす意味と仕組みは?言わない猫もいるって本当?
    (PHOTOCREO Michal Bednarek/shutterstock)

    猫がゴロゴロとのどを鳴らすのは、母猫や飼い主さんとのコミュニケーションのためだと考えられます。

    猫は生後1週間ごろから母猫との対話のためにのどをゴロゴロ鳴らす習性を身につけます。主にお乳をもらう時にのどを鳴らし、横たわった母親に自分の存在を知らせようとします。母猫は、子猫のゴロゴロ音を聞くと安心し、お乳の量も安定して出るようになるそうです。

    また、ゴロゴロ音が低音でやや聞き取りにくいのは、ごく身近な相手への親密なメッセージだったり、自分を癒すためのものだったりするからだという指摘もあります。飼い主さんは、猫の密やかなささやきを聞き逃さないようにしましょう。

    猫がゴロゴロ音を出す主なタイミングは次の3つです。

    リラックスモード

    これは想像通りかと思いますが、ゴロゴロ音は猫がリラックスモードの時によく聞かれます。飼い主さんが撫でてあげると、のどをゴロゴロ鳴らす子が多いです。きちんとしたコミュニケーションが取れている証拠でしょう。

    この「幸せのゴロゴロ」は猫がご機嫌である、というサインです。ゴロゴロ自体は大きな音でもなく、落ち着いた状態でうっとりとした表情を浮かべているのではないでしょうか。

    ストレスモード

    ストレスフルな時にも猫はゴロゴロとのどを鳴らします。たとえば爪切りや入浴など、猫があまり好きではないことを強制すると、安心している状態の時よりも若干大きめの「ゴロゴロ」音を出すようです(もちろん個体差があります)。

    ゴロゴロ音は、猫が自らを癒すために発しているともいわれています。気分が優れない時や怪我をした時に、ゴロゴロ音が気分を落ち着かせてくれるのです。この効果については研究が進められており、ゴロゴロ音が猫の骨折の治癒につながるという研究成果も出ています。

    ゴロゴロとのどを鳴らす行為は、猫が密かに行う毎日の健康習慣なのかもしれません。

    リクエストモード

    食事やおやつの催促など、なにかこちらに要求したいという状況でも猫はゴロゴロと鳴きます。ただし、リラックスモードとは少し違う音に聞こえます。ゴロゴロ音の高さに違いがあるため、表情などもよくチェックしてあげてください。

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    ゴロゴロ音は音域ごとに意味がある?

    ゴロゴロ音は音域ごとに意味がある?
    (Lubava/shutterstock)

    よく耳をすまして猫のゴロゴロ音を聞いてみると、毎回少しずつ鳴き方が違うことに気づきます。音の高さに注意すると、その時の猫の気持ちをより深く理解することができるでしょう。

    今までゴロゴロ音のクセや特徴に注目したことがなかった飼い主さんは、ぜひ愛猫がどんなゴロゴロ音を出すのかじっくり耳を傾けてみましょう。

    リラックスしている時のゴロゴロ音は中低音

    猫のゴロゴロ音の周波数は、25ヘルツ前後といわれています。25ヘルツの音は低音楽器に近い低い音です。くぐもったようにも聞こえ、意識していなければ聞き逃してしまうかもしれません。この周波数は、猫の年代や品種問わず共通しています。

    元気な子猫が出すゴロゴロ音も中低音

    子猫の鳴き声は音域が高くて可愛らしいというイメージから、低めのゴロゴロ音を聞いてびっくりする飼い主さんもいるかもしれません。

    しかし、生まれたばかりの子猫のゴロゴロ音も中低音の低いトーンであるのが一般的。ミルクを飲んでいるときや、飼い主さんに撫でられたときなどに、安心した顔でゴロゴロ鳴いているようであれば、特に心配することはありません。

    おねだりや甘えている時のゴロゴロ音は高音

    何かを要求する時や甘えている時のゴロゴロ音は、リラックスしている時の音に比べて高くなります。

    猫がねだる際に出すゴロゴロ音には、高周波の音が含まれていることがイギリス・サセックス大学の研究でも明らかになっています。しかも、この高音の周波数は、人の子どもの泣き声に近く、飼い主さんへ強く訴えかける効果があることも明らかになっています。

    猫のゴロゴロ音がいつもより耳につく気がしたら、必死におねだりをしているのかもしれません。

    苦しみや怯えを感じている時のゴロゴロ音は低音

    苦しい時や不安な時のゴロゴロ音は、いつもの中底音がさらに低く聞こえることがあります。もともと低い音なので、音程の変化は実際にはわかりにくいかもしれません。ゴロゴロ音のボリュームが落ち、呼吸が荒く聞こえるなどしたら、異変の可能性を考えていいでしょう。

    ただし、ゴロゴロ音の高さだけで健康状態を判断するのは簡単ではありません。あくまで気持ちや体調のバロメーターのひとつとしてとらえ、猫の様子を総合的に評価することが大切です。

    ゴロゴロ音はどんな仕組みで鳴っている?

    ゴロゴロ音はどんな仕組みで鳴っている?
    (SK Kantlumyai/shutterstock)

    それではこの猫のゴロゴロ音、いったいどのようなメカニズムで音がするのでしょうか。

    猫のゴロゴロ音は、「神経振動によって喉頭の筋肉が収縮し、声帯を振動させることにより音が発生している」というのが有力説ですが、実はそれはいまだにはっきりと解明されてはいないのです。そのほかにも「仮声帯」という器官が猫には残っており、ここを動かしてゴロゴロ鳴らしているという説、大きな血管の中で血が流れる振動音ではないかという説もあります。

    しかし、飼い主さんにとっては、ゴロゴロ音のメカニズムのことよりも「猫という存在の神秘」を感じずにはいられません。猫がゴロゴロ音を出す、というのはわたしたちにも影響を及ぼすような、もっと大きな意味合いを持つのかもしれないからです。

     「癒やし」を奏でるゴロゴロ音

    「癒やし」を奏でるゴロゴロ音
    (KDdesignphoto/shutterstock)

    猫がリラックスしてゴロゴロとのどを鳴らす場面のことを思い出してみてください。落ち着きのある、心地よい響きはこの世界中でも唯一無二。有名なオーケストラ楽団でもこのような音は出せない気がしてしまうくらい「癒し」を感じる飼い主さんもいるでしょう。

    実は、猫のゴロゴロ音は「低周波」と呼ばれるもので、リラックス効果があるといわれています。また、低周波の働きにより、脳内で働く神経伝達物質のひとつ「セロトニン」が分泌されることもわかっています。

    このセロトニンは感情や気分のコントロール、精神の安定に欠かせないものです。自律神経やホルモンバランスも整えてくれます。

    ということは、猫がゴロゴロとのどを鳴らすことは、一緒に暮らしている飼い主さんにとってもすばらしいことといえるのではないでしょうか。

    ゴロゴロ音を出さない猫も存在する?

    ゴロゴロ音を出さない猫も存在する?
    (Kolomiyets Viktoriya/shutterstock)

    猫のゴロゴロ音には個性があり、音が小さい猫もいれば、騒がしい音を出すものもいます。リズミカルにゴロゴロする猫もいれば、ゆっくり音を響かせるものもいます。また、ゴロゴロ音をほとんど出さないことも猫の個性です。

    今まで喉を鳴らしていたのに、ある日急にやめてしまうケースもあります。成長して大人になるとゴロゴロ音をやめる、人見知りでゴロゴロ音を出さないなど、ゴロゴロ音を出さない理由はさまざま挙げられていますが、理由ははっきりわかっていません。

    いずれにしても、ゴロゴロ音が聞こえない状態が健康異常だとは限りません。心配な時は、日頃の様子を総合的に観察し、他にも気になる症状や行動があれば動物病院へ相談しましょう。

    猫のゴロゴロ音で注意が必要なケース

    猫のゴロゴロ音で注意が必要なケース
    (Anna Nikonorova/shutterstock)

    苦しそうに低音のゴロゴロ音を出している場合

    前述の通り、ごく低いゴロゴロ音は体に異変が起きているサインの可能性があります。ゴロゴロ音がいつもより聞こえにくい、うなっているように苦しそうに聞こえるといった様子が見られたら、動物病院への受診を検討しましょう。

    ゴロゴロ音の聞き分けに自信がない時は、普段のゴロゴロ音をスマホなどで録音しておくとよいでしょう。「ゴロゴロ音がいつもと違う気がする」「なんだか様子がおかしい」と感じたら、すぐに聞き比べて確認できます。

    病気の早期発見・早期治療のためにも、工夫しながら鳴き声を観察できるといいですね。ゴロゴロ音だけで判断しにくい時は、食欲の有無やおしっこ・お通じの状態などが体調を見極めるヒントになるでしょう。

    ゴロゴロ言い過ぎていたり、ずっと鳴いている場合

    猫は、長時間にわたってゴロゴロ音を出す場合もあります。ゴロゴロ音にはさまざまな意味があり、いつまでも鳴いているからといって異常であるとは判断できません。しかし、猫が不安を感じていたり病気になっていたりする可能性があるため、あせらず猫の様子や習性をよく観察してみてください。

    いつも一緒にいる飼い主さんが、「ずっとゴロゴロ鳴いている」「ゴロゴロ言い過ぎでは?」と心配になるようであれば、動物病院を受診することも選択肢のひとつ。

    高齢で持病がある、ゴロゴロ音の音程がかなり低く食事や活動の間も元気が見られないといった場合は、健康診断を受けてみましょう。

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    ゴロゴロ音以外に注目したいこと

    ゴロゴロ音以外に注目したいこと
    (Ekaterina Kolomeets/shutterstock)

    ゴロゴロ音をはじめとする鳴き声や、ふいに見せる仕草には飼い主さんへのメッセージが隠されています。猫をより深く知るために、日常生活の中で注目しておきたいポイントをまとめました。

    鳴き声

    猫は幼いころから母猫と鳴き声で会話を始めます。成長して他の猫と交流する際は、ボディランゲージをよく用いるようになりますが、人とは鳴き声を多用してコミュニケーションをはかろうとします。猫の鳴き声は十数種類あるといわれ、それぞれの意味を理解すれば猫と通じ合うことができるかもしれません。

    たとえば「二ャーン」は、「ごはんが欲しい」「構ってほしい」などを要求していると考えられています。「シャー」とうなるような鳴き声は、恐怖心や警戒心の表れです。

    事例の通りに鳴かない猫ももちろんいます。実際の鳴き声をよく聞いて、飼い主さん自身が猫の気持ちを推測することも大切でしょう。

    行動

    猫はボディランゲージを何種類も使い分け、飼い主さんに愛情表現を伝えます。

    飼い主さんの膝の上などで前足を足踏みする「ふみふみ」は、安心感を抱いている時によく見られる行動です。子猫時代にお母さんのおっぱいをもんで乳を飲んだ経験を再現しています。赤ちゃん返りともいえる行為ですが、どんなに老猫になっても忘れない行動です。

    飼い主さんなどに近づき体をこすりつける「すりすり」は、自分の匂いを飼い主さんにつけるための行動です。実は何かをねだっているわけではなく、マーキングの一貫なのです。外から帰ってきた飼い主さんに対してしきりにすり寄ってくるのは、外でついた匂いを消すためだと考えられています。

    目の動き

    猫の目は、猫の気分に合わせて変化します。気持ちの高ぶりによって瞳孔の大きさが変わるのです。うれしくて興奮した時や恐怖で怯えている時は瞳孔が大きく開き、黒目がちになります。まぶたも全開になり、驚いた表情にも見えます。

    反対に瞳孔が細く小さい時は、心安らかな状態です。まぶたは少し重たげで、やや眠そうにも見えるかもしれません。

    スリットのような瞳孔は、苛立ちを表している場合もあります。特に他の動物を威嚇して自分を主張したい時は、相手をじっと見つめアイコンタクトをとります。

    多頭飼いで猫が鋭い目線を見せた際は、周囲と無理に距離をつめず、静かに見守りましょう。

    ゴロゴロ音に耳をすませて猫との暮らしを快適に

    ゴロゴロ音に耳をすませて猫との暮らしを快適に
    (antibydni/shutterstock)

    ここまで猫がゴロゴロとのどを鳴らすことについて考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。あらためて考えてみると「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌など関係なしに、猫がゴロゴロ音を出すことは私たちにとっても幸せであるといいたくなります。

    猫のゴロゴロ音は、猫の大切なコミュニケーション手段の一つです。猫が大好きなみなさん。これからも猫のゴロゴロとのどを鳴らす音を聞きながら、楽しく暮らしていきましょう。

    参考資料:
    Elizabeth von Muggenthaler「The felid purr: A healing mechanism?」 The Journal of the Acoustical Society of America, Vol.110, 2666, 2001(2022/10/13閲覧)
    JE.Remmers, H Gautier,「mechanisms of feline purring」Respiration Physiology, Vol.16, Issue3, 351-361, 1972(2022/10/13閲覧)
    NATIONAL GEOGRAPHIC「Cats manipulate their owners with a cry embedded in a purr」(2022/10/13閲覧)
    current biology「The cry embedded within the purr」(2022/10/13閲覧)
    クレア・べサント『ネコ学入門』p49〜51

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    著者・監修者

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