2018.12.18 作成

【獣医師監修】 愛犬の歯磨きをしていますか?歯磨きを怠ると患う「歯周病」の恐怖

獣医師

堀江志麻

堀江志麻

犬達がペットから家族の存在になり、今まで以上にケアをする飼い主様が増えてきました。それは愛犬の歯磨きもしかりです。犬達も歯磨きを怠ると、口臭や歯周病になってしまいます。 今回は、犬が歯磨きをするとなぜ良いのか。歯磨きがもたらす効果についてお話しをします。 (執筆:獣医師・堀江志麻)

もくじ

    愛犬のお口の悩みは「口臭」が多い

    Te9l/shutterstock

    歯磨きの重要性は、今ではたくさんの飼い主様に認識されています。多くの方が家の中で愛犬と一緒に暮らされているため、犬との距離も近くなったからではないでしょうか。

    昔に比べて近年では、愛犬の「歯・お口の悩み」で受診される方が増えているように感じます。

    特に多いお悩みは、愛犬の口臭です。愛犬のお口が臭う場合、どのようなことが考えられるのでしょうか。

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    口臭の原因は、歯周病

    WilleeCole Photography/shutterstock

    もしおうちの子に“少しでも”口臭があるようでしたら、見えていない歯周ポケットで感染や炎症が起きている可能性があります。いわゆる歯周病です。歯周病のないお口の中は本来無臭なのです。

    また、歯周病は症状が重度に陥ると命に関わる危険性もあります。「歯の病気くらい…」と思わず、しっかり歯磨きをして毎日ケアをすることが非常に大切なのです。

    では、その歯周病はどのように進行するのでしょうか。

    歯周病の進行について

    歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯ブラシなどのお口のケアが不十分な場合、歯と歯肉の間、いわゆる歯周ポケットに多くの細菌(歯垢)が停滞し、まず歯肉炎を引き起こします。

    歯肉炎は歯肉が赤く腫れるという症状が出るのですが、口の中は飼い主様には決して見やすいものではなく、犬達も痛みをほとんど感じないため、飼い主様が気付くことは難しく、放置された結果、進行していきます。

    歯周ポケットは健康な小型犬では通常1−2mmの深さですが、歯肉炎が進行すると歯周ポケットはより深くなっていき、嫌気性菌といわれる強い炎症を引き起こす細菌群が増加し歯肉炎から歯周炎へと悪化して行くのです。

    歯周病は歯を溶かし、命の危険につながることも

    Gladskikh Tatiana/shutterstock

    つづいて、歯周病になると一般的にどのような症状が出やすいのかをお話しします。

    歯周病は歯を支える土台(歯槽骨)を溶かすため、歯がぐらつき始め、最後には抜け落ちてしまいます。

    他にも、犬の上顎の歯の根っこはすぐ上に鼻が通っているため、その炎症が鼻にまで到達し、くしゃみや鼻汁を慢性的に引きおこします。また、隣接する頬が炎症によって腫れるなどの症状も見られます。

    全身の免疫力が低下したシニア犬では、口腔内環境が悪化し、歯肉が化膿する症例も増えます。

    その他にも歯周病は、心疾患、脳血管疾患、糖尿病など様々な疾患に関連していることがわかっており、口腔内に特異的な細菌が、心臓や肺など、その他の臓器から発見されていることから、全身に影響を及ぼすことも懸念されます。

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    小型犬・短頭種は要注意

    Ezzolo/shutterstock

    特に小型犬は、大型犬と比較して顎の大きさに対して歯が大きいため(歯が近接している)歯周病になりやすい傾向にあります。

    また、パグやフレンチブルドッグ、シーズーなどの短頭種の子達はその骨格上オーラルケアが重要です。

    通常、鼻の長い長頭種では、どの歯も一列に正しく並ぶのに対して、短頭種の子達は鼻が短いため、顎に歯が入りきらない状態になっています。

    入りきらない歯は、横に捻転したり、2列になったりして入り組んでいるため、その隙間に歯垢や歯石が付着し重度の歯周病となることがあるのです。

    重度の歯周病は、放っておくと大変危険です。歯磨きなどの毎日のケアが非常に大切ですが、愛犬の口臭が治らない場合や痛がっている場合は病院で受診するようにしましょう。

    歯の疾患は大きなストレス。「歯磨き」で予防をしよう

    Littlekidmoment/shutterstock

    経験上、犬達の歯科処置をした後、性格が穏やかになるケースや食事に対して興味が強くなるケース、活動性が増すケースなどが見られます。犬達は歯の疾患に対して、何らかの違和感やストレスを日々抱えていることがわかります。

    歯周病は飼い主様が予防できる疾患です。また、一度破壊された歯周組織は元には戻りません。ですから、予防、早期の発見、治療、メンテナンスがとても重要になります。

    飼い主の皆様には、毎日のオーラルケアによって、愛犬の歯周病をぜひとも予防していただきたいと思います。そのひとつとして、愛犬の歯磨きはとっても大事なのです。

    愛犬が歯磨きを嫌がる場合や上手に磨けているか不安な方は、病院で受診されることをオススメします。愛犬たちは自分で歯を磨くことができませんから、飼い主様が愛情を込めて、きちんとケアをしてあげてくださいね。

    著者・監修者

    堀江志麻

    獣医師

    堀江志麻

    プロフィール詳細

    所属 往診専門動物病院「しまペットCLINIC」院長

    略歴 1979年 山口県宇部市に生まれる
    1986年~1992年 ドイツ・デュッセルドルフに滞在
    1998年 北里大学 獣医畜産学部・獣医学科に入学
    2004年 獣医師国家資格取得
    2004年~2007年 神奈川県 横浜市の動物病院に勤務
    2008年~2010年 同動物病院の分院(東京都大田区)の分院長を務める
    2010年 子供を出産し、一時お休み
    2011年 千葉県と東京都の2つの動物病院で勤務
    2011年11月11日 往診専門動物病院、しまペットCLINIC 開院 現在、東京都内を中心に千葉県、神奈川県にて往診をおこなっている。

    資格 日本小動物歯科研究会(レベル1認定講習・実習 終了)
    日本メディカルアロマテラピー協会(JMAACV日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト)
    日本ホリスティックケア協会(日本ホリスティック協会認定ホリスティックケア・カウンセラー)

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