2018.05.15 作成

【獣医師監修】 犬が車酔いをする理由と予防策

獣医師

堀江志麻

堀江志麻

愛犬を車に乗せたとき、ヨダレが多くなる、あくびが増える、落ち着きがなくなることはありませんか?中には、嘔吐をしてしまう子もいるかもしれません。このような症状は、一般的に「車酔い、乗り物酔い」といわれています。今回は、犬が車酔い・乗り物酔いをする理由と、予防策についてお話しをします。

もくじ

    車酔いのメカニズム

    tiverylucky/shutterstock

    犬の耳の鼓膜の奥には、人間と同様に「内耳」と言われる場所があり、内耳には、位置情報や平衡感覚をつかさどる三半規管と前庭があります。 犬たちは通常、人間と同様に三半規管や前庭でカラダの位置情報を感知して、目で見ている景色(視覚情報)を脳に送ります。自分のカラダの位置や傾き具合を知ることで、自然と姿勢を崩さないようにしているのです。 例えば、私たちは頭を傾けても倒れずに立つことができますよね。しかし、その揺れや傾きが過度に起こると、三半規管や前庭で得た情報と、視覚で感知した情報にずれが生じてしまい、平衡感覚が保てなくなるのです。 その結果、脳の情報処理が追いつかず、胃や腸などの消化器をコントロールしている自律神経に障害が生じてしまい、嘔吐などの症状が引き起こされます。

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    目の位置にも要因がある

    Aarontphotography/shutterstock

    犬はもともと肉食動物。目の前の獲物を追いかけるために、目は「前」についています。一方シマウマなどの草食動物は、いち早く危険を察知できるように目が「横」についているため、視野を広く保てます。 つまり、目が横についていて常に視野が広い草食動物にとっては、景色が横に流れていくのが当たりまえなのです。 一方、目が前についていて視野が狭い犬たちとって、車から見る「横に流れていく景色」は見慣れた光景ではありません。これに慣れていないため、酔いやすいことがあるようです。 もちろん、犬の乗り物酔いには非常に個体差がありますので、全く酔わない子もいれば、車に乗って2-3分でよだれを垂らすなど症状があらわれる子もいます。

    ドライブを楽しむためには?

    車酔い・乗り物酔いをしやすい犬たちに、少しでもドライブを楽しんでもらうためにはどうすればいいのでしょうか。 4つのアドバイスをご紹介しましょう
    1.症状が出たら車を停め、空気を入れ替える

    ferdyboy/shutterstock

    車酔いや乗り物酔いの症状として、「パンティング(呼吸が速くなること)、よだれが出る、あくびが出る」などがあります。 これらの症状が出た場合は、一旦車を停め、窓を開けて空気の入れかえをしたり、外に出て休憩をとることが大切です。 初めて車に乗る場合や愛犬が酔いやすい場合は、小まめに様子を見てケアをするようにしましょうね。
    2.やや狭目のクレート(キャリーバッグ)に入れる

    KristinaSh/shutterstock

    愛犬を車に乗せるときは、やや狭目のクレート(キャリーバッグ)に入れてあげましょう。そうすることで動きが制限されてカラダ揺れにくくなり、犬への負担が軽減します。 愛犬をヒザの上に乗せるオーナーさんも多いと思いますが、実は思っている以上に揺れが大きいのです。また、フリーの状態にするのもNG。犬たちは揺れるたびに足場を固定しようと必死になって体勢を整えるため、カラダが安定しません。 さらに、急ブレーキをかけた時に前へ飛び出してしまうなど事故につながる可能性があるので、大変危険といえます。 **クレートに布をかけるのも効果的 犬の車酔いは、周りの景色にカラダがついていかないことにも原因があるので、クレートに入れてあげることで、窓から見る視覚情報を遮断できる効果もあります。クレートから窓の外が見えるような場合は、クレートに布をかけてあげるのも効果的です。
    3.ストレスフリーの状態にする

    Africa Studio /shutterstock

    愛犬にとって、ストレスがかからない状況を作ってあげることも非常に大切です。 犬の車酔いは、視覚情報や嗅覚情報のほかに「心理的ストレス」によって引き起こされることもあります。 できれば後部座席にクレートを置き、その隣に誰か座って優しく声をかけてあげるのが理想的です。 **クレート訓練をしておこう! クレートに慣れていない犬にとっては、クレートに入ることでさらに緊張感が増してしまうことも。愛犬がおうちに来た日から、クレートトレーニングをしておくようにしましょう。 穏やかにクレートで過ごせることは、車酔いの軽減はもちろんのこと、どこに連れて行っても役立つ習慣です。
    4.食後や空腹時は避ける

    Nina Buday/shutterstock

    食後や、過度な空腹状態では自律神経が過敏になり、車酔いしやすくなります。 車酔いをしやすい子は、朝ごはんを食べて午後に出かけるくらいの間隔が良いかもしれません。とはいえ、時間をあけすぎて空腹になると車酔いの原因になりますので、注意しましょうね。

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    初めての経験が大切

    KristinaSh/shutterstock

    犬にとって、初めて車に乗るときの経験はとても大切です。 一度車酔いを経験した犬は、カラダが揺れたことや当時のニオイなどを覚えていて、車に乗っただけでパンティング(呼吸が速くなること)してしまうことがあります。 ドライブデビューの前にクレートトレーニングでクレートに慣れさせたり、愛犬にとってストレスフリーな状況をつくることで、「車は安心で楽しいもの」と思ってもらえたらいいですね。

    おわりに

    車酔いは、治療よりも予防がとても大切です。できれば車酔いの経験をさせないこと、万が一車酔いをしても、速やかにケアしてあげることが重要となります。 トレーニングしていく中で車の揺れは自然と慣れてくるものですので、我が子の様子をよく確認し、楽しいドライブができるようにしていきましょうね!

    著者・監修者

    堀江志麻

    獣医師

    堀江志麻

    プロフィール詳細

    所属 往診専門動物病院「しまペットCLINIC」院長

    略歴 1979年 山口県宇部市に生まれる
    1986年~1992年 ドイツ・デュッセルドルフに滞在
    1998年 北里大学 獣医畜産学部・獣医学科に入学
    2004年 獣医師国家資格取得
    2004年~2007年 神奈川県 横浜市の動物病院に勤務
    2008年~2010年 同動物病院の分院(東京都大田区)の分院長を務める
    2010年 子供を出産し、一時お休み
    2011年 千葉県と東京都の2つの動物病院で勤務
    2011年11月11日 往診専門動物病院、しまペットCLINIC 開院 現在、東京都内を中心に千葉県、神奈川県にて往診をおこなっている。

    資格 日本小動物歯科研究会(レベル1認定講習・実習 終了)
    日本メディカルアロマテラピー協会(JMAACV日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会認定ペットアロマセラピスト)
    日本ホリスティックケア協会(日本ホリスティック協会認定ホリスティックケア・カウンセラー)

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