皆さんの愛犬は、どのくらいの温度だと、気持ちよく過ごしてくれますか?私たち人間と違って、犬は、自分で温度管理をすることは出来ません。暑いときに、自分で毛皮のコートを脱ぐことも、エアコンのスイッチを入れることも、冷凍庫からキンキンに冷えたビールを出して飲むことも出来ません。 だからこそ、愛犬の温度管理は、すべて飼い主さんの手にかかっているのです。今回は、愛犬に気持ちよく過ごしてもらうための、温度管理について知っていきましょう。
もくじ
(Pixel-Shot/shutterstock)
まずは、犬と人間の、体の違いを学んでいきましょう。
人間よりも、犬の方が、体温が高めです。人の体温は36〜37℃程度。犬は38〜39℃ほどだと言われています。犬を触ったときに、温かいと感じられるのは、体温の違いからでしょう。
人間は体中にある汗腺から汗をかいて、気化熱で体を冷やすことが出来ます。
犬の場合、足裏の肉球のわずかな汗腺から汗をかくことが出来ますが、主な体温調整は、口をハアハアさせて、体内の空気を外気と入れ替えることによって、体温調節をします。
人間は毛で覆われていない動物なので、自由に洋服を着替えて体温調整が出来ます。犬は、被毛が季節に合わせて生え変わり、温度変化に対応することもあります。元々、その犬種の原産国の気候に合わせた毛皮を着ているのです。
気軽に脱ぎ着できる人間と違い、犬は、急な温度変化に合わせて、脱いだり着たりが出来ません。
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犬と人間の体温調整の違いを見てみて、いかがでしょうか?
人間と犬では、違う部分がありましたよね。実は人間の方が、全身に汗をかいたり、こまめに洋服で調整できるので、犬よりも温度変化に対応できる動物なのかもしれません。
外飼いされていた昔のイメージなのか、犬は暑さや寒さに強いというのは間違いです。犬は、暑くても寒くても、文句を言えないだけ。
人間も犬も同じ哺乳類ですから、不快な温度は、心にも、体にも負担がかかります。つまり、私たち人間以上に、犬の温度管理は、気をつける必要があるということなのです。
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では、犬の適温は何度でしょうか?
これは一概に「○℃」とは決められません。なぜなら、個体差があるからです。例えば、以下のようなことが影響してきます。
他にも、コート(体毛)の種類や、体格、体調など、その犬の体に適した温度というものは、その犬ごとに違って当然です。
私たち人間も、家族のエアコンの温度設定で、もめることがありませんか?だからこそ、「絶対に、犬はこの温度設定にするべき!」という決め方は出来ないのです。
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とはいえ、まったく温度設定の目安がないと困りますよね。
あくまで、参考までの目安ですが、気温が20〜25℃を超えたなら、エアコンを付けるかどうかを検討しましょう。
また、人間が半袖になりたくなったら、すでに犬たちは暑く感じている可能性があります。
では、「温度」だけに気をつけていれば良いのかと言うと、そうではありません。温度だけではなく、「湿度」にも気を配りましょう。
気温が25℃以下で、飼い主さんは涼しいと感じていても、犬は、湿度が高いと体内の熱が発散できません。
「湿度が60%を超える」場合には、気温と湿度のバランス を考えてエアコンの「除湿」モードを使用する等の対応をしましょう。
大切なことは、犬の呼吸を見てパンティング(ハアハアする様子)がないかどうかや、ぐったりしていないか等の体調の変化をよく観察することです。
気温・湿度の変化を見つつ、体調を見て、温度・湿度管理をしましょう。家に温度・湿度計を置いて管理するのも賢いやり方です。
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暑いときの扇風機はどうでしょうか?
人間は体の表面に汗をかき、風が当たる事で冷えるので、扇風機でも良いのかもしれません。
しかし、犬は口をハアハアさせて体内の空気と、外気を入れ替えて体温調節をします。
もし、外気が暑かったら、犬の体の中も暑いままです。熱い空気を扇風機でかき回しても、犬の体温調節には役立ちません。
暑いときには、扇風機だけではなく、エアコンで温度自体を下げるようにしましょう。
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さらに、温度調整で気をつけるポイントがあります。犬が過ごしているのは、人間の足元の高さです。
足元に熱が溜まっていたり、足元が冷えているような環境だと、犬につらい思いをさせてしまいます。犬が生活している、低い位置の温度を気にするようにしましょう。
夏であれば、まずは路面に直接手を当てて、その熱さを確認してください。
日射で熱せられたアスファルトは、表面温度が60℃にもなります。そんな路面に犬を立たせたら、当然肉球をやけどしてしまいます。
暑い時期のお散歩は、時間を涼しい時間帯にしたり、状況によっては「お散歩に行かない」という選択をすることも大切です。
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いつも一定の温度に保てれば良いですが、温度変化の大きい季節では、そうも行かないことがありますよね。人間も体調を壊しやすい、季節の変わり目、寒暖差のある日などは、特に温度管理に気を配りましょう。
寒暖差のストレスで犬の体に大きな負担がかかり、下痢をしたり、体調不良が起きることがあります。
さらに、年間通して(特に5〜10月)、熱中症は命の危険につながります。フラフラしたり、異常にハアハアしたり、様子がおかしいことがあれば、すぐに動物病院に行きましょう。
たとえ、その後、元気なように見えても、体内に熱によるダメージが溜まっている可能性があります。
外での温度管理や、自宅での温度管理で、どんな対策ができるのか、家族でよく話し合っておきましょう。もし迷うことがあれば、気兼ねなく専門家に相談しましょう。
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いかがだったでしょうか?人間と同じところも、違うところもある犬。大好きな愛犬だからこそ、気持ちよく過ごしてもらいたいですよね。
日々の温度管理も、愛犬の心と体に影響してきます。日本では、激しく変化する四季に合わせて温度管理をする必要がありますし、愛犬の年齢や体調に合わせた日々の管理も欠かせません。
大好きな愛犬に、少しでも笑顔で長生きして欲しいからこそ、愛犬の様子を観察しながら、愛犬の「適温」を探す研究を続けていきましょう。
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