すっと伸びた手足の長さや、そのたたずまいの優雅さに、目を奪われる人も多いであろうイタリアン・グレーハウンド。小柄ながらも、その特徴的な姿で、多くの方の印象に残る犬種と言えるでしょう。 今すでにイタリアン・グレーハウンドと暮らしている方も、これからイタリアン・グレーハウンドを家族に迎えようかと考えている方も、イタリアン・グレーハウンドの魅力を知り、楽しく快適な暮らし方を学んでいきましょう。
もくじ
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現在の日本でのイタリアン・グレーハウンドの飼育頭数は、全犬種の中で第20位(JKC2018年度犬種別犬籍登録頭数参照)で3,000頭弱と言われています。街で見かけることも少なくない、人気のある犬種です。海外でも人気があり、イタリアン・グレーハウンドは「IG」「Iggy(イギー)」などの愛称で呼ばれることもあります。
イタリアン・グレーハウンドの歴史のスタートは、古代エジプト時代にファラオの宮廷にいた、小型のグレーハウンドの末裔だと言われています。イタリアン・グレーハウンドは、ギリシャを渡り、紀元前5世紀初期にはイタリアにたどり着いたと言われています。
優雅なその姿は、当時の花瓶や器の絵にも多く描かれており、その時代の人気がうかがえる犬種です。ルネッサンス時代には、貴族の宮廷内で大変流行し、イタリア国内外の巨匠の絵画にも、多く描かれている犬種でもあります。
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イタリアン・グレーハウンドは、小柄で優雅な外貌から、あまり運動しなくても良いように見えるかも知れません。しかし、イタリアン・グレーハウンドのルーツとも言われる“グレーハウンド”は、鹿を狩るために使われてきた、狩猟用の犬です。16世紀頃にはウサギを追わせるレースにも使われました。
現代でも海外では、競馬の犬版ともいえるドッグ・レースに使用されるほどのアスリートドッグです。そのため、グレーハウンドと同様に、小柄ではありますが、イタリアン・グレーハウンドも体力があります。毎日のお散歩は欠かせません。
直線を走る速度は大変速く、獲物めがけてまっしぐらに駆け抜ける彼らは、驚くほどの速さです。サイトハウンドと分類されるイタリアン・グレーハウンドは、サイト(Sight)の名前の通り、視覚を使って狩猟をする気質が強く残っています。お散歩中にも目に留まったものに向かって走り出すことがあります。急な飛び出しに対応できるよう、人のいるところではリードは短く持って安全を管理しましょう。
小柄で華奢な体つきのため、リードを引っ張った時にかかる首への負担も大きいです。首輪ではなく、胴輪(ハーネス)を使用するようにしましょう。
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イタリアン・グレーハウンドのスタンダードサイズは最大でも5㎏程度です。
全身が短毛のため、一見すると掃除が楽に思えますが、細かい毛が抜け落ちて服や床に残ります。お部屋のお掃除は覚悟しましょう。
体に抜け毛が残っていると皮膚炎の原因になりますので、柔らかいラバーブラシで、マッサージをするように毎日ブラッシングをしましょう。散歩から帰った後は、排気ガスや汚れを落とすために、人肌に濡らしたタオルなどで体を拭くこともおすすめです。シャンプーは月1~2回。体のケアをした後には、乾燥を防ぐために、必ず保湿もするようにしましょう。
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イタリアン・グレーハウンドは屋外ではなく、室内で人と一緒に生活します。適切な気温は高くても25℃くらいで、湿度は60%よりも低い方が快適でしょう。世界的にも、湿度が高く暑すぎると言われる日本の夏は、日々のエアコンが欠かせません。さらに、人間よりも地面に近い高さで暮らすイタリアン・グレーハウンドは、温度の影響を受けやすいです。お散歩では、コンクリートの反射熱を受けて熱中症のリスクが高まります。
短毛で体温を保ちづらいイタリアン・グレーハウンドは、寒い時季も要注意です。体が冷え過ぎて体調を崩すこともあります。服を着せているイタリアン・グレーハウンドが多いのも、寒さ対策としては当然のことと言えるでしょう。日本の冬は、イタリアン・グレーハウンドには寒すぎますので、オーナーさんが温度管理をするように気を付けましょう。
室内の注意点は、床が滑りやすいと、足腰への負担につながります。家の中でイタリアン・グレーハウンドが歩く場所には、マットやカーペットを敷くようにしましょう。
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イタリアン・グレーハウンドと楽しく暮らすために、病気のことを知っておきましょう。
・骨折: 華奢な骨格のイタリアン・グレーハウンドは、骨折が大変多い犬種です。高い場所に上がって降りるときなどの脚への衝撃や、尾を振ってぶつけてしまった後などに、骨を折る可能性があるため、家具のレイアウトなどは注意しましょう。
・歯周病: 人と違い、犬は3日程度で歯垢が歯石に変わっていきます。そして、歯周病菌が顎の骨を溶かしていき、体内にも細菌が回ってしまいます。毎日の歯磨きは欠かせません。口臭は、口の中が細菌感染をしている状態で、正常ではなく異常です。早めに獣医さんに相談しましょう。
・肥満: イタリアン・グレーハウンドに限らず現代の犬たちには、肥満が増えています。肥満は人生にとって百害あって一利なし。ただでさえ華奢な骨格のイタリアン・グレーハウンドがもし太ってしまうと、関節に大きな負担がかかります。体重管理は、第一に食事、第二に運動。しかし、ワンちゃんは私たちと違って、満腹がわかりません。食事制限はワンちゃん自身では出来ないのです。適正体重にすることが愛情だと思って、カロリーコントロールをしましょう。
・皮膚の病気: アトピー、アレルギー、膿皮症、かゆみなど、様々な皮膚の病気になる可能性があります。イタリアン・グレーハウンドは、短毛のため、外部の刺激による擦り傷なども出来やすいです。日頃から体中を見ながら、小さな傷や湿疹なども見つけるようにしましょう。
イタリアン・グレーハウンドの健康を日頃からチェックしているつもりでも、見ただけでは症状がわかりづらいことも多いでしょう。若いうちは年1回以上、6歳以上なら半年に1回以上、動物病院で健康診断をしましょう。犬は人間よりも病気の進行が早いので、日常でも、少しでも異常を感じたら、早めに動物病院に行くようにしましょう。
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イタリアン・グレーハウンドを家族に迎えるときは、どんなことに気を付けたらいいでしょうか。
イタリアン・グレーハウンドだけでなく、全ての犬種に言えることですが、子犬を迎えてから少なくとも3~8カ月間は、人間の都合は通じません。全面的に子犬のペースに合わせられるように、時間に余裕を持った生活を整えましょう。子犬に4時間以上の留守番は長いため、トイレの失敗や、問題行動につながりやすいと言われています。子犬の保育園や、ペットシッターなども検討しましょう。
生後6か月から1歳くらいまでの間は、子犬の頃とは比べ物にならないほど、体力がついてきます。甘噛みや家具の破壊、お散歩での跳びつきや引っ張りなどの悩みと向き合うことになるでしょう。健康な犬なら、当たり前の正常な成長です。2歳くらいまでかけて、家族全員でコツコツ気長にトレーニングをしながら、子犬と一緒に成長していきましょう。
イタリアン・グレーハウンドと楽しく暮らすためのヒントはありましたか? イタリアン・グレーハウンドを迎える前からたくさんのことを学ぶことで、より快適に暮らしをスタートすることが出来ます。日本中のイタリアン・グレーハウンドと、オーナーさんたちが笑顔で楽しく過ごせることを、心から応援しています。