世界的にも、お風呂が大好きという事で有名な日本人。毎日お風呂に入る人も多いのではないでしょうか。 では、みなさんは、愛犬をどれくらいの頻度でお風呂に入れていますか? また、みなさんの愛犬は、お風呂が好きですか、苦手ですか? 現代の犬のお風呂事情は、まるで人間と同じくらいに進化しています。今回は愛犬の健康と皮膚を守るために、犬のお風呂について学びましょう。今日から、みなさんと愛犬との楽しいお風呂の時間が始まりますよ。
もくじ
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みなさんにクイズです。犬の皮膚は、人間より薄いでしょうか、厚いでしょうか。その答えは、なんとビックリ! 犬の皮膚は、人間よりも薄くてデリケートだったのです。犬の皮膚の薄い部分では、人間の3分の1以下。例えるなら、犬の皮膚は、人間のまぶたほどの薄さが全身を包んでいるのです。
皮膚が薄いとはいえ、その上にたくさんの毛が生えているので、一見すると頑丈に思えるかもしれません。しかし、毛がある分、たくさんの大気汚染や油汚れが吸着し、それが身体中にべっとりとくっついてしまうから大変です。デリケートな皮膚に、たくさんのゴミやアレルゲンがくっつき、毛の奥で蒸れて、皮膚の油汚れと混ざり、皮膚トラブルにつながります。
犬の皮膚は毛でおおわれているからこそ、小さな湿疹や炎症はなかなか見えません。しかし、毛の中で起きている皮膚の炎症は、身体全体の健康を損なうことにつながってしまうのです。
まるで人間の赤ちゃんのようなデリケート肌の愛犬たち。彼らをお風呂に入れなければ、べとべとしてスッキリせず、痛かったり、かゆかったり、とてもかわいそうなことになってしまうのです。病気の予防、健康維持として、愛犬のお風呂は重要な役割を占めているのです。
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犬のお風呂の大事な目的は、毛や皮膚についた汚れを落とすこと。愛犬自身の皮膚トラブルを起こさせないためにも、家の中に、散歩中に付着した汚染物質を持ち込まないためにも、日々のブラッシングやお風呂は必要不可欠なケアです。
愛犬の皮膚を健康に保つポイントの1つ目は、ブラッシング。愛犬を、毎日ブラッシングするようにしましょう。愛犬のシャンプーを毎日できなくても、毛に付いた汚れを毎日ブラッシングで払い落とすことで、皮膚への汚染物質のダメージは減っていきます。人間でも、髪の長い女性は、髪をブラシでとかしてゴミを落とします。さらにブラッシングは、皮膚のマッサージにもなって、皮膚の健康にもつながります。
愛犬の皮膚を健康に保つポイントの2つ目は、お風呂。皮膚汚れを落とすためにシャンプーをすることは、人間でいうメイク落としのようなもの。丸一日、皮膚に乗せた油汚れであるメイクと、顔についた大気汚染をそのままにしていたら、とても気持ち悪いですよね。皮膚に湿疹や炎症が起きても不思議ではありません。しっかり汚れを落として、綺麗な皮膚の状態を保つ必要があります。愛犬たちの毛と皮膚の汚れも、すっきり落とすようにしましょう。
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犬のお風呂の頻度は、皮膚が生まれ変わるサイクルに合わせて、2〜3週間に1度が良いと言われています。しかし、皮膚の状態によっては、週に1回以上になることもあります。
昔は、愛犬をお風呂に入れる頻度が、半年や、数ヶ月に1回だった方も少なくなかったでしょう。なぜ現代では、昔に比べて犬のお風呂の頻度が高くなったのでしょうか。
その理由の1つは、犬のシャンプー剤の進化にあります。昔の犬のシャンプー剤は、皮膚への刺激が強く、頻繁に使うと皮膚がパサパサに乾燥してしまうものだったため、頻繁に洗うことが難しかったのです。
現代では、肌に優しく、週に数回洗うことも出来るシャンプーも出てきています。商品の選び方によって、人間のメイク落としと同様に、日々、体についた油汚れを落とすことが出来るのです。
さらに、シャンプーでしっかり油汚れを落としたら、保湿剤で皮膚の乾燥を防ぐことも大切です。ここで言う保湿剤とは、毛をサラサラ、フワフワにする目的のコンディショナーではありません。皮膚の乾燥を防ぐための、肌用の保湿剤を皮膚にかける必要があります。メイク落としの後に、そのままにしていたら、皮膚はカピカピに乾燥してしまいますよね。人間で言う、化粧水と乳液の役割です。しっかりと愛犬の油汚れを取り去った後には、肌を守るための保湿剤を使って、皮膚の乾燥を防ぎましょう。
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ブラッシングやお風呂の重要性はわかったものの、なかなか愛犬が、ケアが苦手だという皆さん。安心してください。ゆっくり慣らしていきましょう。どんな苦手なことも、慣らしていくためには、小さな成功体験の積み重ねが大切です。
そもそも、犬たちは、ブラッシングやお風呂が健康によくて、自分たちに得なことだ…なんて考えていません。犬たちが、ブラシやお風呂を一度でも「こわい!」と認識してしまえば、一気に苦手な物になってしまいます。
私たちが一方的に「大丈夫よ~!」と声をかけても、無理やり慣らせようとしても、我慢させても、愛犬自身が気持ち的に無理なものは無理なのです。「せっかくケアしてあげているのに!」と思っても、余計に犬を怖がらせてしまうだけです。
もし愛犬がそのケアに対して苦手意識がある場合は、あせらず初心に戻って練習していきましょう。ご褒美に大好きなオヤツを与えながら、ブラシをしたり、お風呂に慣らせたりすることが大切です。
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もちろん、犬ごとに苦手や得意は違いますから、あくまで以下は参考にすぎませんが、愛犬の現在の状況確認をしながら練習してみましょう。ステップを見ていく前に、以下のポイントは重要ですから忘れないようにしましょう。
ポイントその1
必ず、ステップごとに、5mm程度に小さく千切ったオヤツ10粒以上を与えながら実施しましょう。やられていることと、ご褒美がセットになると、愛犬は「おいしくて、嬉しいなあ!」と気持ちを変えていってくれます。
ポイントその2
少しでも愛犬が嫌そうに見えるステップがあれば、前のステップに戻りましょう。硬直しているのは、怖くて動けないだけ。決して「大丈夫!」ではありません。
ポイントその3
オヤツを食べないときは即座に練習をストップしましょう。食べられないなら、怖さが勝っています。そのまま続けても、まったく楽しくありませんし、練習になりません。
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ステップ1
体の各部位を手で触れるかどうかチェック。苦手な部位があって当然です。苦手ポイントがあったら、優しく数秒触るところからコツコツ練習しましょう。各部位を触るごとに、必ずご褒美をあげましょう。ご褒美をケチると、嫌な気持ちが増して、触られることが苦手になってしまいます。
例: 頭、耳、首、お腹、背中、前足、後足、しっぽ。
ステップ2
ステップ1を、手でなくブラシで行う。体の各部位をブラシで触りましょう。ブラシのポイントは、一度にまとめてとかそうとしないこと。少しずつ小分けにとかすことで、ブラシに毛が引っかかって、愛犬に痛い思いをさせることを防止できます。ほとんどの犬は、1度でも毛を引っ張られて痛い思いをすることで、ブラシが苦手になっていきます。日々のブラッシングのためにも、毎日ご褒美をあげながら、身体にブラシが触れることに慣らしましょう。
ステップ3
お風呂の練習をする前に、そもそもシャンプーが苦手だったり、濡れることが苦手な子は、ドライシャンプーを使ってシャンプーの練習をしましょう。水を使う必要がなく、ステップ1と2を終えていれば、基礎はバッチリ出来ているはずですよ。
ステップ4
さあ、本格的なお風呂に向けて練習しましょう。シャンプーをするために、まず場所が怖くないか確認しましょう。お風呂場でオヤツが食べられるかチェック。その場所自体が怖い上に、さらにシャワーをされたらもう大嫌い確定です。お風呂場が怖ければ、愛犬はオヤツを食べられないはずです。場所が苦手なら、まずはその場所でご褒美のオヤツを食べられるようになりましょう。
ステップ5
お風呂場の場所自体が大丈夫なら、お風呂場でシャワーの音を聞かせながらご褒美をあげましょう。それも大丈夫そうなら、ぬるま湯を足元にかけたり、身体にかけましょう。シャワーが苦手なら、湯船にお湯をためて、洗面器でかけ湯をするのもOK。
ステップ6
本格的にシャンプーをする前に、ドライヤーやタオルで拭くことにも慣らしておきましょう。
ステップ7
シャンプーをしてみましょう。犬のシャンプー時間は、長くなるほど犬にとって苦痛です。シャンプー時間の目安は30分以内。短時間で終えられるように、お湯の温度や室温、タオルの準備、シャンプーの泡立てなどは、事前に全て済ませてから、愛犬を迎えるようにしましょう。シャンプー中も、たくさんのご褒美はお忘れなく。
全てのステップは、参考程度のあくまで目安です。犬の苦手なもの次第で、もっと細かいステップに分けられます。さらに、この7ステップをすべてクリアするために、数日で大丈夫な犬もいれば、数年かかる犬もいます。なかなかうまくいかないときや、迷うことがあるときは、是非ドッグトレーナーなどの専門家に相談しましょう。
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ここまで読んでくださった愛犬家の皆さんには、ブラッシングやお風呂の重要性を、とても強く感じていただけたのではないでしょうか。愛犬には、一生快適で健康な皮膚でいて欲しいのは、きっとオーナーさんみんなの、心からの願いでしょう。
しかし、ブラシやお風呂をしたい親心もむなしく、愛犬側は拒否反応を示すこともあります。安心してください。世の中のほとんどの犬は、ブラッシングやお風呂が苦手なところからのスタートなのです。あなたの愛犬だけが、苦手なのではありません。
苦手なものや、それを克服できるようになるまでの時間は、人間も犬もそれぞれです。あせる気持ちもわかりますが、怖いことをすぐに慣らそうとするのは、逆効果になる危険もあります。
慣らすトレーニングに一番必要なもの、それは人間の「根気」。美味しいものと、ちょっと苦手なことをセットにして、楽しい気持ちに変換していけるように、数年単位でコツコツ向き合っていきましょう。