昔から、可愛い家庭犬として人気者のマルチーズ。白くてふわふわ、いたずらっ子のような活発さも併せ持つマルチーズは、私たちを笑顔にする魅力的な犬種です。現在マルチーズと暮らしている方も、これからマルチーズを迎えようと思っている方も、魅力にあふれたマルチーズとの暮らし方を知っていきましょう。
もくじ
日本におけるマルチーズの飼育頭数は、全犬種の中で第10位(JKC2020年度犬種別犬籍登録頭数参照)です。1968年~1984年の間には、飼育頭数第1位の座を不動のものにするなど、絶大な人気を誇りました。
そんなマルチーズは、紀元前1500年頃からと大変長い歴史をもつ愛玩犬。現在の中東のレバノンあたりに住んでいた、海洋貿易を得意とする民族フェキニア人たちが、貿易中継点の地中海のマルタ島に持ち込んだ犬がマルチーズの祖先だったと言われています。貿易船の船員たちのペットとして船旅を共にしながら、各国へ広まり高い人気を集めました。
その後、ヨーロッパにも広く知られるようになったマルチーズは、イギリスのヴィクトリア女王や貴族の愛玩犬として飼育され、一般市民にも大流行することとなりました。
マルチーズの体や性格にはどんな特徴があるのでしょうか。外見も内面も愛らしさにあふれるマルチーズの魅力を紹介します。
マルチーズは元気いっぱい遊ぶのが大好きです。人懐こく、飼い主さんのしつけを守る従順さや知性も備えており、犬を飼うのが初めての方でも扱いやすい犬種でしょう。
基本的には穏やかなものの、神経質な一面もあり、ほかの犬に吠えることもあります。しつけを丁寧に行い、社会性を身につけながら強い警戒心を落ち着かせましょう。甘えん坊でもあるので、失敗しても叱りすぎず、上手に褒めながら育てるのがポイントです。
小型犬に分類されるマルチーズ。体高22〜25cm、体重2.5〜3kgほどと小型犬の中でも体が小さく、超小型犬と呼ばれることもあります。貴族が抱いて歩くことを好んだという歴史もあり、抱っこするのにちょうどいい重さです。個体差はあるものの、オスとメスの体格差はほとんどありません。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さのこと。
マルチーズは柔らかな直毛が特徴です。子犬の頃はカールしていても、成長するにつれてストレートに変化。なめらかで艶のある被毛は、絹糸を思わせる「シルキーコート」とも表現されます。
長毛種のため、地面につくほど長い毛で身体全体が覆われた「フルコート」がトレードマークですが、日頃のケアのしやすさから、短めにヘアカットされたマルチーズもよく見かけるようになっています。
毛色は純白が代表的ですが、淡い茶色や薄いレモンカラーのマルチーズも見受けられます。
マルチーズには、見た目や性格がよく似た犬種がいます。白い小型犬や愛嬌のある犬がお好きな方は、検討してみてもよいでしょう。
ビション・フリーゼは、マルチーズと同じく純白の被毛が特徴の犬種です。活動的で穏やかな性格もマルチーズとよく似ています。
マルチーズと大きく異なるのは、巻き毛で被毛が二層構造になったダブルコートであること。そのためマルチーズより毛並みにボリューム感があり、綿菓子のようなふわふわ感を楽しめます。
マルチーズと同様小型犬ですが、平均体重は5〜6kgでサイズはやや大きめです。
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ボロニーズも純白の毛並みが自慢の犬種。マルチーズのように素直でしつけもしやすく、人懐っこい性格です。
ビション・フリーゼのようにふんわりとした巻き毛ですが、シングルコートのため毛量のボリュームはそれほど多くはありません。被毛を長く伸ばし整えると、まるで女性のソバージュのように上品で優雅な姿になります。
暑さや寒さが苦手なマルチーズは、室内飼いが基本です。気温の変化で体調を崩しやすいため、冷房や暖房を適切に使い快適な温度を保つようにしましょう。
犬を屋内飼育する際は21℃〜25℃が適温かつ、湿度は低めといわれています。しかし、体調や年齢によって快適な状態は変化するため、マルチーズの様子を見ながら温度調整を行ってください。
室内では、足裏の毛が長かったり、床が滑りやすかったりすると、足腰への負担につながります。家の中でマルチーズが歩く場所には、マットやカーペットを敷くようにしましょう。
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マルチーズには消化しやすく、栄養バランスのとれたペットフードを選びましょう。マルチーズはその日の気分や体調によって食が進まないこともあり、食の細さや食べムラに悩む飼い主さんは少なくありません。
一度に量を食べられなくても、必要な栄養を摂取できるよう、肉や魚などのタンパク質を多く含んだフードをあげるようにしましょう。少食が続く時は、食べやすい小粒サイズのフードを選んだり、手作りしたりしてみるのも方法です。
健康な食事は、美しい毛並みを保つためにも欠かせません。被毛ケアが気になる方は、EPAやDHA配合のフードを選ぶといいでしょう。
活発なマルチーズは、毎日適度な運動が必要です。室内で遊ばせるだけでなく、屋外で散歩を行いましょう。
小型犬は室内で体を動かせば十分と思われることもありますが、適度に運動を行わないとストレスが溜まる場合もあります。散歩は1日2回、10〜20分のコースを歩けると理想的です。好奇心も旺盛なので、外の刺激に触れるとリフレッシュにもなるでしょう。
マルチーズはもともと愛玩犬のため、無理にドッグランなどで激しい運動をさせる必要はありません。
ハードな運動は、華奢な足腰へ負担がかかることもあります。個々の体力にあわせて、ボール遊びやにおい嗅ぎなど、飼い主さんと楽しめるアクティビティに取り組んでみましょう。
舌を出して息が上がってきたら、疲れてきたサインです。適度な運動量を守りながら、体力をキープしましょう。
長毛種のマルチーズは、柴犬のように一定の長さに保たれるわけではありません。毛が伸び続けるため、月1回~数回のトリミングが必要です。トリミングサロンに通うための時間や予算を事前に想定しておきましょう。
また、温暖な地域が発祥のマルチーズは、下毛が無く抜け毛の少ない「シングルコート」。細くて柔らかい毛が密集しているためとても毛が絡みやすく、すぐに毛玉になります。
毛玉は毛根が引っ張られて痛く、皮膚にも負担。マルチーズの魅力でもある被毛の美しさを維持するためにも、1日に数回以上のブラッシングを行いましょう。
1日に何度もブラッシングをするのが難しい場合は、毛を短めにカットしたり、週に2〜3回念入りにブラッシングしてあげる方法もあります。
慣れないうちは大変かもしれませんが、手をかけるほどマルチーズの被毛は美しくなっていきます。愛犬のお世話をとことん楽しみたい方にうってつけの犬種だといえるでしょう。
マルチーズに限りませんが、体を触られることに抵抗がある子はたくさんいます。背中は触らせてくれても、足先は嫌がるなど、触られるのが苦手な部分がある子も少なくありません。
ボディケアのためにも、ご褒美に美味しいものをあげながら、全身をくまなく触る練習を繰り返し、人の手が体に触れることに慣れさせるようにしましょう。
マルチーズのお世話のポイントは、成長段階によって異なります。子犬期・成犬期・高齢期に分けて、飼い主さんが気をつけておきたい点を解説します。
子犬期は社会性を身につけさせたい時期です。しつけがうまくいかないと、噛み癖や無駄吠えなど問題行動につながる場合もあります。噛む・吠える態度の一因には、周囲への警戒心や恐怖心が考えられます。
マルチーズがいちはやく生活場所に適応できるよう、家の中や散歩コースに不安やストレスになるような要素はないか、気を配りましょう。
成犬期は十分な運動量を確保し、健康維持に努めることが大切です。ボール運びや、ロープの綱引きなど、おもちゃも活用しながら運動させましょう。子犬期に社会性を身につければ、ドッグランでの遊びも楽しめます。
注意したいのは関節のズレといった足腰のトラブルです。激しい運動は小さな体に大きな負荷をかける可能性があります。外で遊ぶ場合は、芝生の広場など足腰に負担をかけない場所を選び、坂道や階段など転倒のリスクのある場所での活動は控えましょう。
甘えん坊な性格から、成犬になっても単独でのお留守番は苦手なマルチーズもいます。一人暮らしで飼う場合は、マルチーズが愛情不足にならないよう、帰宅後に遊んであげる時間を確保しましょう。
マルチーズは12歳ごろから高齢期に入ります。体力が落ち、外での散歩や活動は難しくなっていくでしょう。足腰が衰えるため、お部屋の中でも転倒によるケガには一層注意が必要です。
運動量が減るのに合わせて、ドッグフードは低脂肪タイプを選ぶなど、ヘルシーな食事を心がけましょう。視力が老化することで、白内障になるマルチーズも増えます。定期的に健康診断を受診し、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
マルチーズを迎えたら、まず始めたいのはしつけです。トイレや散歩の練習から始め、社会性を身につけさせましょう。12週齢までは子犬が環境への適応力を身につけやすい時期とされていますが、12週齢を過ぎるとしつけができないわけではありません。なるべく早く始めることが肝心です。
素直な性格のマルチーズは、ペット初心者でも比較的しつけしやすい犬種です。ルールを守れなかった時はきちんと叱り、できた時はしっかりほめて信頼関係を築きましょう。
マルチーズの名付けに迷ったら、飼い主さんに人気の名前を参考にしてみましょう。
オスの場合は「レオ」「そら」、メスでは「もも」「モカ」といった名前が人気。「モモ」は犬の定番ネームとして親しまれており、マルチーズに限らず犬の名前として選ぶ人が多いようです。
また、マルチーズをもじった「マル」、真っ白い毛並みをイメージさせる「ミルク」「ココ」といった名前は、オス・メスともに人気です。短く呼びやすい名前や、かわいらしい響きの名前が選ばれているようです。
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マルチーズの平均寿命は13歳ほどと言われています。小型犬全体の平均寿命の13〜15歳と比較すると、マルチーズの寿命はおおむね平均的といえるでしょう。
マルチーズと楽しく暮らすために、病気のことを知っておきましょう。
足の膝のお皿がずれる病気で、歩くときに足を浮かしたり、跳ねたりする症状がでます。痛みや不快感をともなう場合があります。
心臓の弁がうまく閉まらずに、血液が逆流してしまう病気です。6歳を過ぎたあたりから特に増えてくると言われています。
涙は、目を潤した後に目頭から吸収されて鼻に流れるのが通常ですが、涙管が詰まると涙が鼻の方に抜けず、目頭からあふれてしまいます。これにより、眼の下の被毛や皮膚が涙に触れ続けて涙やけを起こし、皮膚の炎症につながることもあります。
マルチーズに限らず、現代の犬たちには肥満が増えています。肥満は糖尿病などの病気の一因になり、特に高齢期のマルチーズには心臓への負担になり、心臓病を引き起こすこともあります。体重管理と適度な運動を習慣にし、欲しがるままに食事を与えるのは避けましょう。
マルチーズの子犬の価格は40万円前後(2022年1月時点)。生後間もないほどマルチーズは高値になる傾向があり、生後60日〜70日のマルチーズは50万円を超えることも。一方で、生後100日以上経過していると20万円前後で購入できるケースもあるようです。
マルチーズを購入する方法には、ペットショップで探す、ブリーダーから迎える、保護犬を譲り受けるといった方法があります。気軽に相談したい方は、身近なペットショップへ来店してみるとよいでしょう。
親犬の様子や成犬時のサイズ感などが気になる場合はブリーダーを利用する方法もあります。飼育のプロであるブリーダーから、専門的なノウハウを学びながら家族に迎え入れることができるでしょう。
子犬に限らずマルチーズをお迎えしたいなら、保護犬の里親制度もチェックしてみてください。ペットショップやブリーダーと比べるとも、少ない費用でマルチーズを迎えることができます。
小型犬の平均的な飼育費用は、1カ月あたり1~2万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で3,000~5,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で1,000~2,500円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、小型犬の場合1回3,000~1万円程度をみておきましょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で3~5万円ほど必要でしょう。1カ月にすると3,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、小型犬の1ヶ月の保険料は1,300~2,800円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で 決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合1歳時のおおよその体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。