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〜人と犬との気持ちの“ズレ”〜
2018.07.18

「噛みつく」ときの、犬の気持ちとは?
〜人と犬との気持ちの“ズレ”〜

ワンちゃんと暮らす中で、「噛みつき」に悩んだり、困っている方に出会うことは少なくありません。ご自身が噛まれることを予測していなければ、オーナーさんはとてもショックです。
では、噛んでしまった側のワンちゃんの気持ちはどういったものなのでしょうか。
人を下に見ているから噛んでいる?いきなり理由もなく噛んでいる?そういう性格の犬だから噛む?…果たして本当にそうでしょうか。
本当のワンちゃんの気持ちを理解することで、仲良く暮らすための心構えを作りましょう。
(執筆:プロドッグトレーナー・大久保羽純)

犬の気持ちの理解のために。「あなたなら、いつ“噛みつき”ますか?」

InBetweentheBlinks/shutterstock

まず考えてみましょう。あなたはいつ噛みつくでしょうか?噛みつくのは犬だとして、人間で考えると、人を叩いたり、言葉で攻撃したりするのはどういったときでしょうか?

多くの人は「私は人を攻撃なんてしないわ!」と思うかもしれません。ワンちゃんもそうです。通常、攻撃はしないのです。でももし攻撃をするとしたら、それは「自分の身が危険にさらされた」と感じたときです。

ワンちゃんはそもそも、人と同じように群れで生活する平和な動物です。むやみに人を傷つけません。犬が噛みつくことはよっぽどのことであり、噛むのであれば早急にその状況や生活を改善する必要があるのです。

「噛みつく」ときの犬の気持ち=不安・恐怖

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「噛みつく」ときのワンちゃん側の気持ちはどのようなものでしょう。ほとんどの場合は「不安」「恐い」「嫌だ」などの気持ちでしょう。遊びの間の興奮での甘噛みなどは除き、人を噛む行動をとるワンちゃんの心の中はストレスでいっぱいです。嫌だよ、やめてよ、という気持ちを噛むことで伝えているのです。

最初から噛んでいたわけではない

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ではそもそも、ワンちゃんは噛むことでしか「嫌だよ」という気持ちを伝えられないのでしょうか。いいえ、そうではありません。ある家庭のアクシデントを覗いてみましょう。

例:噛みつくまでにいたったチョコちゃんの心境

トイプードルのチョコちゃん。大好きな使用後のティッシュを見つけて、ごきげんで噛んでいます

ママ:「あら汚い!飲みこんだら危ない!口から出しなさい!」
チョコ:目をそらす。硬直する。(げげげ!ママが私のものを欲しがっている)
ママ:「早く口から出すの!」
チョコ:逃げる(大変!!宝物なのに、盗られちゃう!)
ママ:「チョコちゃんのためなのよ!」
チョコ:うなる(ママに、渡したくないよ。だって渡したら二度と返してくれないもん)
ママ:「ママの命令なのよ!うなるなんて生意気よ!」
チョコ:噛む!!!(どうしたらわかってくれるの?本当に嫌だよ)
ママ:「急に噛まれた!どうして!?」ママは手を引いた。
チョコ:(やっとやめてくれた。噛めばママはわかってくれるんだね。学習したよ。)

…どうでしょうか。人とワンちゃんの気持ちにはズレが生じていますよね。ほとんどの犬は、嫌なことに対して始めは噛みつきではなく、逃げようとしたり、硬直したりします。唸ることもあるでしょう。でも、人間側は嫌なことをしているつもりはないので、犬の小さな意思表示を見逃します。そこでワンちゃんは、最終手段「噛みつき」をします。噛みつくと多くの人は驚いて、やっていたことをやめます。そうして、ワンちゃんは噛みつきを覚えていくのです。

噛まれるシチュエーションと犬と人の気持ちのズレ

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人と犬の心のすれ違いは多くの場面で起こります。いくつか例を見てみましょう。

  • 噛んで遊んでいるガムを取り上げようとしたら噛まれた
    オーナー:危険だから飲み込まないように取り上げたかった。
    犬:自分が見つけた宝物を横取りされた。盗まれた!
  • 散歩後に足ふきをしたら噛まれた
    オーナー:家を綺麗に保ちたかった。足を清潔にしてあげたかった。
    犬:足の裏というとてもデリケートな部分を無作法に触られて恐かった。
  • 宅急便の配達の人を噛んだ
    配達の人:荷物を届けたかった。
    オーナー:何度も来ている配達屋さんなんだから安全よ。
    犬:たびたび不法侵入してくる敵!今日こそは、やっつけなくちゃ!
  • 抱っこしようとしたら噛んだ
    オーナー:ただ抱こうとしただけ。
    犬:足のつかない不安定なところは怖いよ!
  • ソファから降ろそうとしたら噛まれた
    オーナー:自分が座る場所を確保したかった。
    犬:気持ちよく寝ていたのに、理由なく起こされてどかされて、びっくりした。
  • ドッグフードを食べているときに近づいたら噛まれた
    オーナー:近くで見たかった。トッピングを追加してあげようとお皿に手を伸ばした。
    犬:大切なご飯を取られるかもしれない!
  • お腹をなでようとしたら噛まれた
    オーナー:可愛いからなでたかった。
    犬:お腹に傷や腫瘍が出来て痛かった。触らないで欲しかった。

上下関係の問題?なめられているから噛まれる?噛む性格の犬?

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ここまで読んでいただいた方なら、もうおわかりのはず。「人の事を下に見ているから噛む」なんてことは全くありません。そもそも犬と人で上下関係は成立しないというのが現在の国際的なドッグトレーニングの常識です。

犬は人間の3~5歳児程度の知能と言われています。もし人間の3歳児がおもちゃを取り上げられて泣いて怒っているのに、「おまえはお父さんをなめているのか!?」とはならないでしょう。

さらに、「我慢しろ!泣くならもっと叱るぞ!!」ともならないでしょう。もし不安や恐怖で泣いているのに、さらに叱られるようなことが重なれば、信頼関係はボロボロになってしまいます。大人にとったらどうでもいいことでも、子供にとっては譲れない、大切な事があるのです。ワンちゃんも同じなのです。

こういったことの積み重ねで、うなるなどの、嫌だという気持ちの表現をせずに、噛みつくワンちゃんになってしまいます。

初めから噛む性格のワンちゃんはいません。どうしようもなく不安に襲われれば、どのワンちゃんだって噛む可能性はあるのです。噛まないで済むような日々を暮らせることがオーナーの役割であり、お互いの幸せへの道なのです。

噛むワンちゃんとの付き合い方

噛むことのあるワンちゃんとどう暮らしていけばいいでしょうか。第一にすることは、具合が悪いなどの身体的な問題がないか病院で確認します。トレーニングなどをする前に、健康チェックをすることが重要です。病気であれば治療して、根本的なストレスを除去しなければ、改善しようがありません。

その上で、噛む状況の確認をします。今まで噛まれた(噛まれそうになった)ときの状況を書き出して下さい。少なくともワンちゃんにとっては、その状況が楽しいものではなかったはずです。

噛む状況を確認したら、ここから2つの道があります。

1.その状況を避けられるなら避ける。
例えば、愛犬が他人を苦手だとわかっているのに、公園でいきなり他人に触らせる必要はありませんよね。「ごめんなさい、この子なでられるのが苦手なので」と避けることで噛むことを予防出来ます。郵便屋さんに攻撃するワンちゃんなら、玄関で応対する時に対面させると噛む可能性があるので、ドアを隔てて別の部屋にいてもらえば良いのです。必要のない不安や恐怖は与えない方がいいのです。

2.どうしてもその状況が避けられないならトレーニングをする。
例えばタバコの吸い殻などを口に入れてしまったら、どうしても口から出させる必要があります。しかし、無理やり取ろうとすると信頼関係が崩れますから、その時のために日頃から「ちょうだい」の練習をしておきます。口に何かくわえているときに「ちょうだい」と言って、大好きなオヤツを30粒以上床にばらまきます。そうすると口にくわえているものをさっさと出しておやつを食べに行くでしょう。それを繰り返し、「ちょうだい=ご褒美の合図」と思わせていくのです。それ以外にも、避けられないことをしなければいけないときのために、日頃からのトレーニング方法はたくさんあります。

愛犬が噛んだ後、絶対にやってはいけないこと

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噛んだ後で叱ったり、痛めつけたりすることです。恐怖で攻撃しているのに、さらに大きな恐怖で押さえつけようとしてしまっては、信頼関係の崩壊、さらに次の噛みつきの度合いがより深い傷につながる可能性があります。

では、噛んだ後にどうすればいいのでしょう。噛んだ後にできることとは、恐怖状況にあるワンちゃんの状況を安心なものに変えることだけです。「もう攻撃しなくていいよ。もう怖くないよ」と、恐怖の対象から遠ざけるしかありません。なにより大切なのは、噛んだ後ではなく、噛まなくていい状況にいさせてあげる「予防」の考えなのです。

血が出る噛みつきなら必ずプロの力を借りること

噛みつきが不安や恐怖の現れとするならば、オーナーだけでなく、ワンちゃんにとっても噛みつく状況は幸せではありません。たかが「噛みつき」ではありません。放っておいたらそのうち直るものでもありません。少しでも早く、その状況を改善して、噛まないで済む状態にしてあげる必要があります。

特に血が出る噛みつきの場合は、動物病院やドッグトレーナーなどのプロにご相談ください。1人で責任を感じて、なんとかしようと頑張らなくていいのです。あなたを支えるプロが、あなたと愛犬の幸せをサポートします。

愛犬の最高の理解者になろう

噛まれる側の人の気持ちだけでなく、噛んでしまうワンちゃん側の気持ちも知っていただけたでしょうか。そもそも種族の違う、人と犬が仲良く暮らすために大切なのは、お互いを理解し合うこと。愛犬にとってオーナーが最高の理解者であり、友人でいられるように、日々を重ねていきたいですね。

プロフィール

大久保羽純

大久保羽純

PERRO株式会社 代表取締役
米国CCPDT認定CPDT-KAライセンス所持プロドッグトレーナー

日本とニュージーランドでトレーニングを学び、現在は東京で「Happy Dog Training for LOVE & PEACE」をモットーに、犬と人の心をつなぐレッスンを広めている。しつけ方教室を始め、イベント開催、企業のコンサルティング、行政からの講演依頼、保護活動への協力、東京都動物愛護推進員など、日々犬と人の生活を楽しいものにする活動を行っている。